日常のち誕生日

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―――――― 翔が右を、フレリアが左と別れ一時間余り。 翔の方は些細な手がかりも掴めず大木に背を預けようとしてる頃、フレリアは遠目に何かを見つけた。 「あれ……小屋かな?」 斜面を切り崩し、平坦となった地面に建てられた一軒の小さな山小屋。 しかしフレリアは妙に気になり木の陰から室内を覗く。するとどうか、見たことのある二人の黒服が誰かから叱られているではないか。 「あれって、けど……うーん……見えない」 だが全貌が見えず、フレリアが場所を移動しようとした時だった。 「こんな偶然有っていいのか、いや良いんだろう」 「っ!?」 背後からの声にフレリアが振り向いたときは既に、小さな妖精は籠の中の鳥となっていた。 「え、何これっ!?」 水晶のように透明な四角の檻。その格子を掴み慌てるフレリアに後ろの声の主、ちょび髭を生やした目を開けていない細身の男が喋る。 「お前は逃げられるか、いや逃げれない。この檻は中にいる者の魔力を百分の一まで抑えるもの。幾ら妖精と言えども壊す事敵わぬさ」 だが男の言葉を聞いてなかったのかフレリアは力一杯格子に体当たりするも 「っ~~!?ぁ……あうぅ……」 頭を抱え倒れ込む結果に。 「妖精は人語を理解できぬか、いやできる。それでも強行突破しようとするか。面白いものだ」 男は興味深げに笑い小屋の中に入っていく。その音に黒服二人を叱っていた人物が喜色を露わに振り向く。 「エインさん!!聞いてください、この二人が妖精を見つけたって言うのに逃がしたって言うんですよ!!エインさんからも何か言ってください!!」 ちょび髭の男、エインに必要以上に近づき、そう懇願する女性の後ろの二人が呟く。 「まただ、また猫かぶり始めたぜこの小娘」 「全くだ、何が『エインさ~ん』だ。新入りのくせによ、この表裏人格持ちが」 二人の悪態に女性はゆっくりと振り返り 「お二人とも何か言いました?」 「「いえ、何も」」 総勢四名、男三人、女一人の、全員揃って黒服の奇妙な盗賊集団がそこに集合した。
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