日常のち誕生日

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三人の、もはや日常となりつつある光景のなか、エインは片手に持つ檻を皆に見えるよう前に出し言う。 「お前たちが言ってるのはこの妖精だろうか、いやそうだろう」 向けられた檻の中の金髪の妖精を見て黒服二人はそれぞれ声を上げる。 「ああ、そいつです!!」 「でも、どうしてエインさんが!?」 「偶然外にいたのを捕まえただけだ」 別段興奮した様子もないエインに少女はうっとりした表情で近づき言う。 「妖精を捕まえるなんて……流石ですエインさん!!何所かの二人とは大違いです!!」 本日二度目のやり取りに二人は肩を竦める。 「またか、もう気にしたら負けなきさえしてきたぜ」 「ああ、それよりエインさん、餓鬼が一人いませんでした?何処にでもいそうな普通な餓鬼なんですが」 「俺は少年を見たか、いや見てない。その少年がどうかしたのか?」 「いえ、その妖精と一緒にいたので多分ですが」 「ええ、妖精も命令に従っていたので召喚使ではないかと」 「ほぉ」 今までの無表情を崩しエインはうっすらと笑い先を促す。 「その少年の実力はどれ程だ?」 期待の籠った声。大陸に二、三人しかいない召喚使の一角。並の実力者ではないと想像するエイン、だが二人は期待に応えられないと苦笑しつつ手を横に振った。 「いえ、召喚使の方はてんで弱かったです」 「ええ、あれなら俺達でもやれますよ」 あの時、翔はただ殴られていただけで、その実力が然程でないと思われるのも仕方がない。 その言葉にエインはそうかと、長年連れ添ってなければ判断できないレベルで声を落とし、フレリアの入った檻を部屋の奥へと持っていき静かに床に置いた。 そして立ち上がると三人の方を向き声を低める。 「召喚使が助けに来ないか、いや助けに来る。実力を隠してたとも考えられる。仕事に支障を来す訳にはいかない。気を抜くな」 「「「了解です」」」 いがみ合おうと命令には忠実。軽く頷きエインはフレリアの檻の隣の、数倍の大きさの檻の上に手を置き 「退屈な仕事かと思ったが、面白くならぬか、いやなる筈だ。なあ」 死んだように檻で眠る虹色の鳥に声をかける。 「極彩鳥よ」
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