日常のち誕生日

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―――――― 帰ってこない、帰ってこない、何故帰ってこないんだ。粉のかかった木は淡い光を灯している。 俺でさえすぐ見つけれたんだ、フーが見つけられない訳がない。既に日が落ちてもう何時間経ったことか。 「探しに…いや入れ違いになっても……ああもう!!」 髪をかき乱しながらうろうろと落ち着きなく歩き回る。娘の帰りを待つお父さんの気持ちがこれなのか。 良い考えも浮かばないけどこれでは寝るに寝られない。もう入れ違い覚悟で行くしかないのか……。 腰を曲げ地面に落ちてた木の棒を拾い土に文字を書いていく。 「これでよし。あとは……」 周りの木から掌に小さな山ができるまで粉を集めて周り、リュックを背負う。 「フーの通ったルートは……あっちか」 これでどっかで熟睡してようものなら説教してやらねば。そして俺は小さな光を手に欠伸一つ、歩き始めた。 ―――――― 「う、う~ん……あれ、ここは?」 軽い頭痛に唸りながらフレリアはむくりと起き上がる。そして自分の現状を再確認し 「私、捕まったんだ……」 格子を掴み力を込めるがビクともしない。するとその音に耳をピクリと動かす者が一人。 机にだれていた体を起こしフレリアを見ると一言。 「ありゃ、妖精ちゃん起きたんですね」 眼が覚めきってないのか瞼を擦り、ニパッと笑う。だがフレリアの視線は別の方を向いていた。 人の物でない、そのとんがった耳を。 「エルフ……?」 エルフ、一族が皆淡い金の髪をしており、特徴的な尖った耳は微かな音も聞き分け、人の数倍の寿命と高い身体能力に文字通り自然と会話を行える。 人知れぬ場所に暮らす森の番人ともいわれる一族。そもそもこのような場所にいるのはおかしい筈だが。 「そうですよ。話せば長い訳があって盗賊的な事してます」 隠すつもりもないのか小娘と言われていた女性は、あっけらかんと耳を掻きながら認める。 そして驚くフレリアにお構い無く自己紹介を始めた。 「あ、私はクレシャ・トリーティアっていいます。小さい頃は里では物知りクレちゃんて呼ばれてました。今はある人に超絶絶賛恋に恋しちゃってる乙女です。てへっ」
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