日常のち誕生日

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息を呑む一進一退の攻防。翔が型もくそもない、それでいて神速の斬撃を繰り出せば、エインは二本の十手のような魔武器を巧みに扱い攻撃を捌いていく。 逆にエインが僅かな隙を縫うように突けば、翔は持ち前の身体能力を生かし避けていく。 その様子にクレシャは感嘆の声を漏らす。 「エインさんと渡り合える人間がいるなんて驚きです。フレリアちゃんの召喚使は武にも特化してるんですね」 翔がフレリアを取り返そうとしたとき、クレシャは敢えて動かなかった。 避けることもできたが、エインと翔が戦えばフレリアは帰れなくなる。 それはいけないと判断し、そして自分を罵倒した煩い双子を沈めてくれたことへの感謝も込めて、わざと驚いたふりをしたのだ。 結果的にはエインに阻まれたが、それでも動きは見えていた。 しかし今の翔の速さは目で追うのが精一杯だった。 エルフの身体能力は優に人間を越している。それは魔力の少なさを補うための力。それが通用しない、例外の部類。 流石は聖人と頷くクレシャにフレリアは首を振る。 「ううん、私は翔と契約は交わしてないよ」 予想外の言葉。 「……へ?それじゃあ何で一緒に?」 「翔は私の親友で、家族だから」 自慢げに胸を張り答えるフレリアにしばしの閉口。 妖精からここまで絶対的な信頼を得ている人間が存在する。ただただ驚きの一言に尽きた。 「……フレリアちゃんはあの少年が好きですか?」 恋愛ではなく家族として、その問いにフレリアは恥かしげもなく答える。 「うん、好きだよ」 「……そんなハッキリと断言できる関係ですか。羨ましい限りです」 自分もあの人とそんな関係に、そんな妄想をしつつ戦いに目を戻す。依然変わらぬ攻防、だが少しの変化をクレシャは見抜く。 「これは…もうすぐ勝負がつきそうです」 クレシャからすれば喜ぶべきか、悲しむべきか、難しいところであった。 「ん?」 ふと視線を下ろせばフレリアの心配そうな顔が。しかしクレシャは大丈夫ですと優しく語りかける。 「フレリアちゃんは帰れます。負けるのは……残念ですが、私の未来の旦那様みたいです」 「旦那様……結婚するの!?」 「はい、近々にでも」 まったくの嘘である。
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