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――――――
無我夢中で剣を振りまくり、気が付けば当たらなかった攻撃が当たり始めている。
掠る程度だが、それでも、これは……
「らあぁっ!!」
「くっ……」
捌き切れていない、速さについてこれなくなってるのか。
俺が速くなった?違う、エインさんの動きが鈍り始めている。
その事に自分でも気づいていたのか、エインさんは大きく後方に跳び、肩で息をしながら言う。
「まだ戦えるか、いや限界だ。……少年、我が儘を聞いてくれるか?」
「……要件にも依りますが」
「なに、大したことじゃない。次を最後にしよう、それだけだ」
つまりは、漫画でよくある、至高の、最高の一撃で勝負を終わらせようということか。
常識で言えば、そんな賭けをしなくともこのままいく方が勝率は高い。相手に乗る必要はないんだが
「―――分かりました」
乗らなきゃ男じゃないでしょ。
「そうか……感謝する」
そう呟き、エインさんは腕を大きく引き、魔武器に魔力を纏わせ構える。
バチバチと唸るそれは電気。紫のそれは次第に荒ぶっていき、そして動く気配はなし。俺から仕掛けろということか。
得体の知れない技にシルファリオンでは軽すぎる。ならどうするか、決まってる。有無を言わさぬ強烈な一撃をお見舞いすればいいだけだ。
さっさと終わらせてミーシャを祝うんだ。
全身に魔力を巡らせ、地を蹴る。
瞬時に間合いを詰め、眼前で振り上げられた最速の剣に対抗するように、俺の視界に二つの紫の閃光が走る。
「【十紫電!!】」
紫の奔流が、俺を突き殺さんとばかりに轟き迫る。シルファリオンでは破れたかもしれない。
しかしその瞬間に、振り下ろされた剣は姿を変える。
「『グラビティ・コア!!』」
神速の加わった、人を地に縛る力の名を冠した剣は、その重量で迫る魔武器をいとも容易く砕き、その使用者を轟音とともに叩き伏せた。
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