日常のち誕生日

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目を覚ますや否や阿呆な顔で出せと鳴き続け、もれなく付属していた鍵で開けてやれば人の頭を我が物顔で占領してきた。 恩義も何もあったもんじゃねぇ。 見たところ体長アバウト五十センチ。特徴、もふもふして暑苦しい、綺麗、重い、顔が阿呆。 「おい、帰してやるから暴れんな」 「グアァァァ」 「い、いてっ、首を捩じるな!!」 掴んで振り落とそうとする俺と、意地でもしがみ付く雛。暴れまわる俺たちに、フーが何か思いついたようで北に指を向ける。 「ねぇ、あっちに親がいるんじゃないかな?」 「む?」 言われた通り試しに北の方角に体を向ける。 「…………」 「…………」 マジか、暴れねぇ。 「なあ、お前の親はこの方角にいるのか?」 賢いのは本当のようで、人の言葉を理解してるらしく、雛は首を上下に振る。探す手間は省けそうだな。 「りょーかい。けどリュックを取りに行ってからだがな」 「グアァァァァァ」 「おふっ、いぎぎぎぎ!?お、おいこら……恩人を、殺す気か!!」 しかし捻りは大きくなり、泣き叫ぶ頸骨その他諸々の俺の骨たちの声。 「わ、分かった。肉、肉やるから……だから、いぎぎ……や…め…ろ……」 「グァ」 百三十度ほど首回転。 「ぶふっ!?……はぁ、はぁ……殺されるかと思った……」 肉のフレーズに、途端に大人しくなり、雛は俺の目指すリュックのある方を見据え始めた。 恐ろしい馬鹿力だ。それに親より食を取るとか。面倒な拾い物だぞこれはもうああダメだ首が痛い。 「ふふ、仲良いね」 横から一部始終を見ていたというのに、どう捉えたというのか。 皮肉なく、本当にそう思ってるんだろうこの子は。嬉しそうに笑うフーに少しイラッ。 「あれだ、こいつの仮の名はフー二号だ。決定、これからそう呼ぶ」 「……うん?何で私なの?」 俺の皮肉に気付くわけもなく、フーは首を傾け頭上に?を浮かべている。 「あれだよ、お互い可愛いげがあるって意味だ」 「え?……えへへ、そんな、褒めても何も出ないよ」 嬉しかったのか、フーはくねくねと体を捩り、頬を緩ませ始めた。 ヤバイ、素直すぎて嘘だと言い出せない。 本当は食い意地張ってるという意味だ。教えはしないがな。
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