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ただの白い羽ではなかった。柔らかな、淡い光を帯びたそれは、虹色の羽よりも翔を魅了した。
無言で見つめること数秒、吸い込まれそうな感覚に襲われるもはっとしたように小刻みに首を振り、翔は訊く。
「これは……?」
『私たちの生涯で、唯一無二の白き羽。一片の曇りもない魔力のみの籠った、聖羽と呼ばれるものです』
「唯一無二……そんな貴重な物を……いいのか?」
『貴方は息子を助けてくれた。友と認めるのに理由はそれだけで十分ではありませんか?』
息子を第一に想うその言葉に、これこそ母親の鏡だと思うしかない。
器の大きさに感心しつつ、翔は気になっていたことを口に出す。
「しかし虹色の羽の方は……何というか、魔力の塊みたいだな」
雛とは全く違うさわり心地。手触りも、羽毛に似てはいるが、聖羽と違いどこか羽っぽさがなかった。
『私たちの羽は魔力が基盤なのです。他の鳥類のような羽の感触は大人になるにつれてなくなります』
「成長するにつれて魔力が高まるから……か」
レクルスに来てから、翔も何も勉学を全くしてないわけではない。本を読み、教会で子供たちと一緒に学び、一般常識ぐらいは知っていた。
人も同じく、魔力のある生物は成長するにつれ魔力が高まり、密を濃くしていく。
『ええ、そして成長の過程で抜けた羽は、地に落ちた瞬間に消え去ります』
「だからこれは珍しいのか……。それじゃあこの羽もいつかは消えるのか?」
翔の質問に、極彩鳥は首を縦に振り肯定する。
『最も魔力を宿した羽ですので約70年、それが私の羽が消えるまでの期間です』
「俺が長生きしたとすれば、死ぬまでは、この三枚は消えないのか」
『そうです。ですから、友好の印となるのです』
その人間が死ぬまで、羽は在り続ける。子へとは受け継がれない、繋がりとなる。
「……ありがとう、大事にするよ」
羽を胸元に持っていき、翔がお礼を言うと極彩鳥は微笑み
『私達からすれば、この羽を贈ることのできる多種族に出会えたことは、誇りでもあるのです』
「そこまで言われると照れる」
『いえ、私はそこまで大きく考えてはいませんが』
「あら」
『しかし、願わくば、貴方とはまた巡り合えることを、私は望みます』
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