日常のち誕生日

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スフィア逹が訪れ半刻。天心では、皆が出てくる数々の料理に舌鼓を打ち、笑い声が店内を包んでいた。 それは誕生日を祝う席としては少々騒がしすぎる程だったが、それでもミーシャからすれば翔とフレリアの不在を忘れさせてくれる一時であった。 そして宴もたけなわ。 デザートの特製杏仁豆腐をスプーンで掬いながら、スフィアがふむと唸る。 「しかし、帰ってこないな」 「?」 スプーンを口に含んだまま首を傾げるミーシャにスフィアは続ける。 「あの二人だ。戸が……むぐっ!?」 しかしそれは一人の手によって遮られる。 「マスター!!私お腹が一杯なので私の分をあげますから!!さぁ、食べてください!!」 怒濤の勢いでアリシアは自らの杏仁豆腐をスフィアの口に強制的に流し込む。 「やめ、あむっ……おい、アリシ……むぐっ!?」 しかしそこはアリシア。気管に入らぬよう丁寧なスプーン捌きを見せる。 それでも苦しいことに変わりはないのだが。 アリシアの唐突の行動にレイア以外がキョトンとしてるなか、リックが口を開ける。 「そういや確かに翔っちが………グボォァッ!?」 襲い掛かる鈍痛。 リックが震えながら腹部に目を向けると、人の拳が深くめり込んでいた。 「お、おい……レイア…何で……」 拳の主、隣に座るレイアに詰まる呼吸で問いかけると、彼女は優しく微笑み 「リックのお腹に虫がいたから潰してあげたのよ」 そう言い引き抜いた拳の表面には二ミリ程の虫の死骸。 「指で……充分だろうが…………あぁ、そういうことか……しかし……いい…パンチだった…………」 女性関連はめっぽう鋭いリックだが、今回は気付くのが遅かった。 ミーシャを見て何かを悟ると、最後は称賛の言葉を言い残し、テーブルにバタリと俯せる。 一連の不自然すぎる流れ。鈍感な者なら気付かぬかもしれないが、ミーシャがそんなわけもなく。 悲し気な微笑みをしながらミーシャは首を振る。 「アリシアもレイアさんも、気なんて使わなくていいよ。翔は帰ってくるって言ったんだから、私は待つだけ」 その健気すぎる振る舞いは、見ていて辛いものがあった。 「ミーシャさん……」 「ミーシャ……」 事情を知ってる二人からすれば、想定外の事態に申し訳無さを感じての行動だったが、意味はなかった。 少しの沈黙。 その時、厨房から叔父の声が響く。 「ミーシャ、あいつらの事で話がある」
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