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――――――
そこからは最早宴会騒ぎだった。
何処からともなくレイアが葡萄酒を取りだし、誕生日とは何だったのか、そんな馬鹿騒ぎに変わっていた。
そして今はアリシアだけが酔い潰れ二階で眠りに落ち、叔父が料理を作ってる中、他はと言うと
「ふはは、そんなものかリック!!私はまだまだいけるぞ!!」
「フィア、お前誰に話してるんだ。そっちには誰もいないぞー。戻ってこーい」
「姉さんお酒に弱いくせに一杯飲むから。……けど、私もちょっと酔ってきちゃったかしら?」
「嘘をつけ、どう見ても素面だろうが。しかし美味いな……ほれ、ミーシャも飲んでみろ、今ならあの人も見てないしな。美味いぞ」
「それじゃ少し……ほんとだ、これ美味しいね」
無礼講もいい所だった。
そのままミーシャは二口目に突入するも、不意に目が眩む。
「あ…れ……?」
酒を二口、久しぶりに飲んだとはいえ、ここまで弱くは無かった筈なのにと、ミーシャが頭を抑える。
そしてその姿を横目に入れたレイアは驚きのあまり目を見開き、ダンッと立ち上がる。
「ちょっとハンクさん!!それ度数がとっても高いやつじゃない!!どうしてミーシャに飲ませたの!?」
「ん、そうなのか?違いが分からんかった……って待て!!すまん、俺が悪かった!!」
笑顔ながらに、こめかみに青筋を浮かべ手を振り上げるレイア。
「そんな強いお酒飲ませたら体に悪影響が出ることぐらいわかるでしょ!!」
「待て、話せばわかる!!」
今まさにハンクを叩かんとするレイアに、ミーシャは少しふらふら頭を揺らしながら言う。
「レイアさん……私は大丈夫だから。けど、ちょっと外の空気吸ってくるね……」
そのままミーシャは扉まで向かい、後ろから聞こえてきた小気味よい音とともに外へと出た。
――――――
「すぅー……ふぅ……」
雲が流れる三日月の空の下、深呼吸を繰り返す。
酒の臭いが無くなったためか思いの外、酔いは早々に醒め始めていた。
「もう少し休もうかな……」
夏といえど、夜になれば気持ちのよい風も吹き、過ごしやすい気候へ変化していて。
そのまま何気なくミーシャが空を見上げた時だった。
月を背に人が上下にゆらゆら、落ちそうになりながら空を飛んできた。
まだ酔ってるのかと目を擦るも、その人物は消えず。
そしてもう一度目を凝らし、その正体にミーシャは気付く。
「翔……?」
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