誕生日のち出会い

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「いやいや、クロウリーさん。師匠が変わる訳ないって」 八尋がないないと手を振る。マスターに向かって。それはつまりマスターが…… 「マスター!!クロウリーって名前だったんですか!?」 「ん?ああ、そう言えば、言ったことが無かったね」 平然と言われた。俺、結構驚いたんだけどな。しかし、クロウリー……似合ってる名前だ。 「というか、八尋はマスターと知り合いだったんだな」 「まあ、前に何回か師匠と一緒に会ったのさ。けど、この町に住んでるなんて、ビ、ビックリー」 「全くビックリしてる様に見えないがな」 寧ろふざけてる様にしか見えない。何というか、八尋のキャラが分かってきた気がする。 軽くふざけあっていると、それをニコニコと眺めていたマスターから声が上がる。 「それよりも翔くん。八尋君の引越しの手伝いは私がするから、君は早くギルドに向かった方がいい」 「へ?何でです?」 振り向き尋ねるとマスターの視線はギルド最上階を向いていて。 「君が来るのを待っている人がいる」 ―――――― 心の師匠の言葉を聞かない訳にもいかず、言われるがままに二人に別れを告げ、現在ギルドの入り口扉前。 「ふむ……」 その場でふと考える。成り行きで来たが、俺を待つ人とは一体誰だろうか。 最上階ならマスター(小っちゃい方)以外居そうもないが、連絡も寄越さずに気づかれるまで待つような電波的な面倒臭いことをする人ではないし。 「はて、誰なんだか……ん?」 思案にふけっていると、お腹にボフッと何かが埋まる感触。 すっと視線を下げると艶のある銀の髪が右に左に荒ぶっていた。 「マスター、何ふざけてるんですか?」 「ぶはっ、ふざけてなぞおらんわ!!貴様が扉の前でボーっと突っ立っておるからぶつかったんだ!!」 確かに、邪魔だったな俺。 「あー、すみません。それよりも」 「貴様、謝る気が無いだろ」 呆れ返った視線をスルーし、ギルドの頂を指さす。 「最上階で俺を待ってる人がいる様なんですけど、誰かわかりますか?」
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