誕生日のち出会い

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「それより、俺を待ってる人って誰なんですか?エアリィさんのあんな姿そうそう見た記憶がないんですが」 「うむ、私も確信がある訳ではないんだがな……そう言えば、戸神にはまだ話したことが無かったな」 五階まで来たところで、マスターがピタリと歩を止め、物憂げに振り向く。 「このギルドの最上階は私の部屋ではないのだ。その上に、ギルド創生時から存在する部屋がある。其処はこの街を私たちの祖先と共に作り、ギルドを発足した人の部屋なのだ」 「でも、そんな昔の人は……」 とっくに死んでいて、もぬけの殻ではないのか。そう言おうとしたが、察していたのかマスターは軽く笑い 「お前がそう思うのも無理はない。だがな、居るのだよこの世界には。人の理を超越した人間が」 「い、一体それは!?」 珍しくノリノリのマスターの乗ってみると、気分を良くしたのか勢いよく俺に手を向け言い放つ。 「それはな……不老不死だ!!」 「な、何だってぇ!?」 「ふふ、それが私たちの初代ギルドマスターなのだ。驚いただろ」 「色んな意味で」 「……?まあいい、兎も角あの人が来てるかもしれないということだ。早く行くぞ」 慣れぬ乗りに恥ずかしさを覚えたのか、マスターは顔をパタパタと扇ぎながら上へと進んでいく。 その後ろでふと思い返すのはリンさんの言葉。いずれ出会える、あれはそういう意味だったのだろう。 「さて……」 マスターは自分の部屋の前まで来ると、すぐ右の部屋の扉を開ける。 その部屋は必要最低限の家具しかなく、人の住んでる気配は一切しなかった。 「ここの何処に?」 尋ねるとマスターは上を指さし 「違う、この上だ」 その瞬間、足元に青の魔法陣が展開される。それに反応する間もなく脳が直接揺れるような感覚に襲われ、目を開けると薄暗い十畳ほどの一室にいた。 その先に、ランプの小さな灯火を楽しむかのように、明りが遮断された部屋で、揺り椅子に身を委ね、片手に持つ古びた本を閉じ、寛いでたらしき一人の男が温和な笑みを浮かべこちらを向く。 「ああ、やっと来ましたか。ようこそ、歓迎しますよ」
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