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「初代……あ、俺の名前は」
俺も自己紹介しようとしたがそれは手で制され
「戸神翔、年は十八。力は剣の想像による具現化。仙道照之の差し向けた魔族をミーシャと共に撃破。その後は盗賊団『猫』と接触、これも撃退。西の大陸トリアーデでハンク、リックと共にギルド対抗戦に秘密裏に参加、準優勝に終わる。怪盗センとも接触あり……大雑把に纏めると、こんなところでしょうか」
「…………」
何を見ながらでもなく、すらすらと、紛うことなく俺の近況を述べていった。
ただ俺も良いことなのか分からないが、少し麻痺してきたのか、驚いたけどそこまででもないという。
「あまり、驚いたりはしませんね」
それは意外とでもいう風に、初代は笑う。いや、まあ何と言いますか。
「この街って、隠し事ができないんですよ」
これまでに俺のプライベートが露わにされたことか、分かったものじゃない。
そして質が悪いのは犯人が見つからないこと。どうしようもないね、もう諦めてる。
「ふふっ、確かにその通りかもしれない。この街は昔からそうでした」
懐かしむ表情に乾いた笑いしか返せない。街を造った人が言うってことは、もう対処しても駄目なんだろう。
「でも一応、誰から俺の事を?」
「長く生きていると、有能な情報屋とも多く出会う機会もありましてね。彼等に君の事を調べてもらいました」
知らぬ間に情報他人にダダ漏れ。
「けど、なぜですか?」
「君がどんな人間か、知っておきたかったと言っておきましょう。それよりも、本題に入りましょうか」
指をパチンと、軽快な音が響き俺の背後にイスが現れる。
「座ってください。……さて、話というのは、簡単に言ってしまえば一言で済みます」
揺り椅子に腰を下ろし、肘掛けをトンと一叩き。出てきたのは透明さと黒ずみが混ざりうねるビー玉のような球体。初代はそれを指で軽く弄りながら俺に見せる。
「これは……?」
見ていて胸をざわつかせるような、嫌な感じがする。それに映る自分まで汚れていくように、纏わりつくヘドロのようにそれは蠢く。
「そうだね……これが完全に黒に染まり、真っ二つに割れる時。それが仙道の復活の時です」
初代の目が真剣なものに変わり、見据えられ、息を呑む。
考えたくなくても、やっぱり、何時かは向かい合わなきゃならない時が来るってことか。
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