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「復活……」
今まで、何も考えていなかった訳でもない。どうすべきか悩んだ時期もあった。けど、俺は結局何も決めきれずに逃げていた。……もう、そのツケが回ってきたっていうのか。
「それが半年後か一ヶ月後か、それとも明日なのか。それは私にもわからない。そして分かったとしても私は何もしないでしょう。私がするのは未来を担う使いへの手助けだけ」
球が指から抜け、ふわりと浮かび俺の眼前で停止する。
「それは君が持ってなさい。いずれ来る決断の日まで、逃げずに、向かい合うのです」
ぽとりと、球が俺の手の平に落ちる。渦巻く黒い何かが、中に映る俺を取り巻きながら『お前に人が殺せるか?』そう、嘲笑いながら俺に尋ねてくるようで。
この球、持ってて気分が悪くなる。正直投げ捨てたい。力の限り遠くに放り投げたい衝動に駆られるけど、そうも言ってられないのか。
「……分かりました」
それしか言えなかった。ランプの灯が心なしか小さくなった気がするのは、俺が弱いからだろうか。
日本にいた頃、一度だけ、人を殺したいと思ったことはある。けど、どれ程憎もうとも実行できなかったから俺は此処にいる。
全くもって、分からない。
そんな気持ちがばれたのか、初代は微笑を浮かべ
「無理もありません。君は、若すぎる。それでも、どんな答えを出すかは君次第。ただ、その答えに後悔だけはしてはいけない。後悔しない答えは、きっと君が出せる最善のものである筈でしょう」
「初代……」
はっ!?……何だ今の胸のときめきは?俺にそんな趣味なんぞ……
「どうしました?」
「い、いえっ別に。……それより、さっきマスターが言っていた命の恩人で育ての親というのは……っ!?」
どういう事かと訊こうとしたその時、目の前で魔方陣が輝き、次の瞬間俺の目に入ったのは眩い銀一色だった。
それがレイアさんと分かるまで数秒、声を掛けようかと思ったがそれは聞いたこともない幸せに満ち溢れた声に止められた。
「兄様っ、お帰りなさいませっ!!」
感激一杯、揺り椅子に座る初代に向かってレイアさんが抱き着き、後ろから見るにあれだ、すりすりと胸に頬ずりしてる。
……ほぅほぅ…ほぅ?何ですかなこれは?
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