誕生日のち出会い

12/45
前へ
/605ページ
次へ
整理しよう、目の前にいるのは間違いなくレイアさんだ。だがあんな風に頬を緩ませて人に甘えるのがレイアさん? 否、面白いこと好きで、けど凛とした清楚な大人の女性。それがレイアさんではないか……と言いたいところだが、考えてみれば俺、レイアさんのことをあまり知らない気がする。 「…………」 甘えるというのは、つまり気を許してるという事。この場に俺は居てはいけない。 初代も申し訳なさそうに目で訴えている。レイアさんの気が緩んでる間に、一先ず、退散しますか。 会釈を一つ、魔方陣の上に立つ。使い方は多分…… 目の前が青に変わる。かろうじて見えたのは小さく手を振る初代の姿で 「今、誰か魔方陣に……」 「誰もいませんよ。それよりもレイア、話の続きを」 「は、はいっ。それからですね―――」 「―――っと……」 ―――戻ってきた。変わらぬ殺風景な部屋で違う所と言えば、マスターがベッドに座ってることぐらいか。 「魔方陣の起動方法を知ってたのか?」 問われ、曖昧に笑う。 「何となく、さっきマスターの魔力を感じたので」 魔力を込める。それだけだったけど。 「それより、あれ、レイアさんなんですよね?」 あの猫の様な姿が、未だに信じられない。そこに共感できるとこがあったのか、マスターは顔を伏せて笑う。 「くく、そう言ってやるな。あの人はレイアが唯一、甘えられる相手なのだ」 「唯一?」 「そうだ、あの人だけだ。あいつが全てを曝け出せるのは。私にでさえ、あの姿はそうは見せんさ」 「……育ての親、だからですか?」 問いから、数秒の間を置き、大きく腕を伸ばしマスターは立ち上がる。 「そう…だな……。お前が抱えてる最大の秘密を打ち明けたら、私たち姉妹について教えてやらんでもない」 「またですか」 前にも二度ほど、俺が“何者か”を訊いて来たことがあった。あの時ははぐらかしたが、別に言っていけない訳じゃない。ただ、機会が無かっただけ。 皆、信用できる人たちだ。この数か月、たった数か月かもしれないけど、俺はそう断言できる。 それと引き換えに、二人の事が知れるなら俺の秘密ぐらい、喋ったって構わんだろ。 「やはり、言えんか」 「……いえ、良いですよ」 「なっ……本当か!?」 「ええ、そうですね。簡単に言えば……俺は ――――――この世界の人間じゃありません」
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5171人が本棚に入れています
本棚に追加