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整理しよう、目の前にいるのは間違いなくレイアさんだ。だがあんな風に頬を緩ませて人に甘えるのがレイアさん?
否、面白いこと好きで、けど凛とした清楚な大人の女性。それがレイアさんではないか……と言いたいところだが、考えてみれば俺、レイアさんのことをあまり知らない気がする。
「…………」
甘えるというのは、つまり気を許してるという事。この場に俺は居てはいけない。
初代も申し訳なさそうに目で訴えている。レイアさんの気が緩んでる間に、一先ず、退散しますか。
会釈を一つ、魔方陣の上に立つ。使い方は多分……
目の前が青に変わる。かろうじて見えたのは小さく手を振る初代の姿で
「今、誰か魔方陣に……」
「誰もいませんよ。それよりもレイア、話の続きを」
「は、はいっ。それからですね―――」
「―――っと……」
―――戻ってきた。変わらぬ殺風景な部屋で違う所と言えば、マスターがベッドに座ってることぐらいか。
「魔方陣の起動方法を知ってたのか?」
問われ、曖昧に笑う。
「何となく、さっきマスターの魔力を感じたので」
魔力を込める。それだけだったけど。
「それより、あれ、レイアさんなんですよね?」
あの猫の様な姿が、未だに信じられない。そこに共感できるとこがあったのか、マスターは顔を伏せて笑う。
「くく、そう言ってやるな。あの人はレイアが唯一、甘えられる相手なのだ」
「唯一?」
「そうだ、あの人だけだ。あいつが全てを曝け出せるのは。私にでさえ、あの姿はそうは見せんさ」
「……育ての親、だからですか?」
問いから、数秒の間を置き、大きく腕を伸ばしマスターは立ち上がる。
「そう…だな……。お前が抱えてる最大の秘密を打ち明けたら、私たち姉妹について教えてやらんでもない」
「またですか」
前にも二度ほど、俺が“何者か”を訊いて来たことがあった。あの時ははぐらかしたが、別に言っていけない訳じゃない。ただ、機会が無かっただけ。
皆、信用できる人たちだ。この数か月、たった数か月かもしれないけど、俺はそう断言できる。
それと引き換えに、二人の事が知れるなら俺の秘密ぐらい、喋ったって構わんだろ。
「やはり、言えんか」
「……いえ、良いですよ」
「なっ……本当か!?」
「ええ、そうですね。簡単に言えば……俺は
――――――この世界の人間じゃありません」
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