誕生日のち出会い

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俺の言葉に、マスターは目を閉じ大して驚いた様子もなく、『そうか……』と呟くと近くの椅子に腰を下ろした。 何だ、異世界人ってのはそこまで珍しくないのか?反応が思ってたより寂しい。 「期待外れでしたか?」 訊くと、そうではないと首を振り 「……予想はしていた。薄々だが、お前はあの人に通ずるものがあったからな」 「あの人というと……初代ですか?」 「そうだ。……まあ、座れ」 指差す対面の椅子に座ると、マスターは何かを思い出すように天井を見上げ 「お前に……戸神に初めて会った時から、私達とは違う得体の知れないものを感じてた。その感覚には覚えがあってな、辿ってみればあの人が浮かんだのだ」 そしてマスターは俺を見て軽くため息を吐き、指先に小さな氷の球を作ると器用に回転させながら続ける。 「最初は苛ついたものだ。あの人と似ても似つかぬ姿、性格で、感じるものが同じというのは抑えがたいものがあった」 「はは……だからあの頃は俺にきつく当たってたんですか」 「いや、お前の態度が気に食わないが七割を占めてた」 そんな失礼な態度取ってたっけ俺? 「レイアも同じ事を思ってたようでな、クエスト先でお前を見つけ追いかけてちょっかいを出したらしいな」 「あれをちょっかいで済ませますか」 唐突理不尽暴行殺人未遂事件。そう言っても過言じゃないぞ。 「何を言う、怪我をしたのはレイアだけだろうが」 「それはそうですけど……不可抗力ですって」 腕を折ってしまったとは考えもしないわけで。 マスターもそこは理解してくれてるらしく、確かにと笑い、氷を背後にヒョイと、机上の花の活けていない花瓶に投げ入れ俺を見る。 「まあ、今となってはいい思い出だ。あの人には到底及ばぬが、私は、お前を認めている。レイアもきっと同じだろう」 ……そういえば最近は前に比べて、マスターがよく笑うようになった気がする。認めてくれたのは本当なのか……なんか嬉しいな。 「光栄の至りです。あ、俺の秘密は話したんで二人の事を」 「……まったく、人が恥ずかしさを我慢してるというのに……。ふっ、まあいい」 今更かと、マスターは両肘をテーブルに乗せ、指を絡ませるとその上に顎を置き 「そうだな……約束は約束だからな。まずはお前が訊きたそうにうずうずしてた“育ての親”の理由についてでも話そうか」
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