誕生日のち出会い

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スフィアとレイア、二人が産まれたのはどちらも、とある街の片隅にある小さな診療所だった。 母の名はサナ・クレス。スフィアを産んだ当時、齢28。母親である彼女は二人の親と疑う余地のない、銀の髪を持つ美人であった。 それ以外は何処にでもいるただの市民で、この一家に他と違う何かが在るとすれば 「お母さん、何で家にはお父さんがいないの?」 「……前にも言ったでしょ。お父さんは事故で死んじゃったって」 父親がいないということか。 それでもそれを気にするのはレイアだけで、スフィアはと言うと。 「…………次」 感情を表に出さない、いや、出さない子供であった。 七歳にして手には分厚い魔導書。机の上にはこれでもかと小難しい書物の山。神童と言われざる片鱗を既に見せていた。 しかし、妹レイアとは正反対にコミュニケーション力が皆無と言えるレベルで無く、外で遊ぶ事をせず部屋に引き懲り本を読む毎日。 それにより併発した愛想のない冷めた眼と声。 友人という友人は殆どいなかった。 それでも 「……レイア」 「ん?ああ、はいお姉ちゃん」 「ふふっ、さすが姉妹ね。私には何を欲しがってたのか判らなかったわ」 「……んっ」 「あらあら、これは私でも判るわね。ふふ、甘えん坊さんね」 「お母さん!!私も撫でて!!」 「はいはい、そうくると思ってたわ」 仲睦まじく寄り添う親子の姿。 借家に暮らし、貧しくとも、父親が居なくとも、本人たちからすれば幸せな生活を送れていた。 当たり前にあるようで、なかなか見つからないそんな生活。 だが、そんな生活が終わりを告げるのは誰にだって起こりうる、非情で、残酷で、それでいてどうしようもない事だった。
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