誕生日のち出会い

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―――――― 秋空の下、少女たちは暗闇で期を待つ。母親の最期の言葉を頼りに。 『あなたたちのお父さんはね……本当は生きてるの。……ごめんなさい、隠していて』 享年三十八歳。そのまま父親の居場所を告げ、サナ・クレスは息を引き取った。 死因は日本でいう癌のようなものだった。末期に近く、治る見込みはなかった。ただ、お金が有ればあと一年は長生きできたであろう状態で。 十にも満たない子供に稼ぐ手段が有る訳もなく、借家から追い出されるのにさして時間は掛からなかった。 長年住み続けた家を失い、残された生きる術は未だ見ぬ父親のみ。 居場所は数百キロ離れた街。 持ち金は残り僅か、二人がその街に行くためには犯罪をするしかなかった。 「……お姉ちゃん、もう……」 「……あと少し我慢」 「……うん」 ガタガタと揺れながら荷と荷の間でうずくまり、身を潜める。 所謂、密航である。 見付かれば牢屋にぶち込まれるのは必至。それでも、それしか手段は無かった。 だが、馬車に乗り早数時間が経過し、子供には限界が近かった。空腹とストレスが精神を衰弱させていき、遂には 「お母さん……ぐすっ、もう、やだよぉ……」 「レ、レイア……そんな声を出したら……」 「……ふぇぇ、お腹減ったよぉ……帰りたいよぉ……!!」 レイアの声は外まで響くのに充分なもので、スフィアが咄嗟にレイアの口を塞いでも遅かった。 馬車が二、三度揺れて止まり、バサリと布が開かれる音と共に光が差し込む。 「猫かそこら辺かと思ってたが、まさか子供とはな……」 顔を覗かせたのは中肉中背の無精髭を生やした男だった。 頬をカリカリと掻き、意外そうな表情で怯えている二人を眺めると、ゆっくりと立ち上がる。 「決まりは、決まりだからなぁ。さて、どうしたもんか……」 男が荷台に足を踏み入れる。 その瞬間、レイアは大きく震え涙を垂れ流し、スフィアは来るなと震えながら目で威嚇する。だが大の大人にそれは意味を持たない。 荷物を避けながらな男は二人の前まで近付き屈む。 「そんな怖がられるとおじさんも悲しいんだが。それより、何でこんなことをしたんだ?」 「……み、見逃してください。お願いします……」 問われ、理由を話す前に、スフィアは許しを請う言葉を出す。
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