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「これが悪い事だってのは分かってるんだな?」
「はい……でも、これしか方法が無くて……お願いします……何でもしますから許してください……」
床に頭をつけて必死に謝るスフィアを見て、男は息を吐く。
「止めてくれ。子供が土下座なんてするもんじゃない。余程の事情なんだろうが……今日はもう進まない。ここで泊まるからな」
そう言うと、男は荷台の横の木の窓を開ける。二人が目を向けるとそこは宿泊施設街道、つまり宿屋が並ぶ場所であった。
「そ、それなら……今夜一晩だけでもここを寝床にさせてください。明日には出ていきます」
「わ、私からもお願いしますっ」
またも頭を、しかも今度は姉妹揃って。男は困ったように口を歪める。
「だが荷台に乗せたままで風邪でも引かれたらな……そうだ、お前たちも一緒に泊まるか。もう一部屋なら取れないこともない」
「「……え?」」
予期せぬ提案に呆ける二人に男は言う。
「事情を聞いてみなけりゃ判断のしようがないからな。その様子じゃろくに飯も食ってないんだろ。まあ決めるのはお前たちだが……どうする?」
「…………」
スフィアは腕の中で震えるレイアを見る。自分はともかく、レイアは以前より弱っているのは明確だった。
このまま荷台で寝れば倒れるのは目に見えていた。裏があるかもしれないが断っていられる状況でもなく。
「お、お願いします……」
「よし、それじゃあ行こうか」
――――――
「おぉ……好きなだけ食べていいとは言ったが……」
場所は食堂。部屋も取り、男の計らいで夕飯を取っていたのだが
「「…………」」
幼き姉妹は何処にそれだけ入るのかというほど無心で食べ続け、男が食べ終えても尚、食の手を止めなる事は無かった。
テーブルには既に大人数人分の皿が置かれていて。
男は知らない、しかし察することはできた。この姉妹がどれだけ食に在りつけていなかったかを。
食べていいといった手前、男に二言は無しと、片手に珈琲を一つ。
のんびりと二人の食事光景を眺めていた。しかし、時たまちらりと口元を緩め、金袋に目を泳がせながら……
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