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「見逃してくれるんですか……?」
「ああ、そういう事だな。それと目的地は確かラスヴィエルだったか。そこは配達場所に入っているから同乗者って理由で連れてってやらんでもないぞ」
「ほ、本当ですか!?……あ、けど……」
「遠慮する必要はない。関わって縁が生まれたんだ。これも運命なんだろ」
おじさんはそれだけ言うと、手を二度ほど振り
「明日は朝一で出発するからな。もう夜も更けてきてる。部屋に戻って寝とけ」
ぶっきら棒だけど、優しさが伝わってくる。
「はい……その、お休みなさい」
「ああ、お休み」
眠そうに笑うおじさんに手を振り部屋を出る。胸がとっても暖かい感覚がする。あぁ……私、嬉しいんだ……
「レイア……って、もう寝てるか」
扉を開け、暗い部屋で微かな光を頼りにベッドに入る。ベッドは一つしかない部屋だとおじさんは申し訳なさそうに言ってたけど、それで充分だった。
寒い空気が入ってきたせいか、もぞもぞと身を丸めるレイアの髪を撫でる。
「レイア……きっと、上手くいくから……」
きっと、何とかなる。そのまま私はレイアを抱きながら目を閉じた―――
――――――
「ん……ふぁぁ」
眩い何かに、目を覚ます。起き上がり辺りを見回し思い出す。昨日は、親切なおじさんに出会って、それで……
「あれ、レイア?」
布団の中にレイアがいない。トイレかと首を横に動かすと、レイアが扉の前で幽霊でも見たような真っ青な顔で震えてる。
それだけで、私の目を覚ますには事足りた。
「どうかした、レイア?」
「そ、外に……」
レイアは扉の外を指さし黙りこむ。気になって扉を少し開け、飛び込んできた光景を理解ができなかった。
階段下には数人の兵士と、その人たちと話す人の
―――おじさんの姿―――
「ど、どうして……」
頭が真っ白になる。何で、だって、昨日……連れてってくれるって……なんで、兵士が、どうして……
「お、お姉ちゃん、どうしよう……」
服の裾を掴まれて、けど何も答えられない。分からない、分からない、分からない……なんで、どうして……
「うそ……うそだって、こんなの、絶対…………っ!?」
次の瞬間、おじさんと目があった。
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