誕生日のち出会い

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グイッと、体が引き寄せられ料理の匂いのする布が顔に押し付けられる。 状況が理解できなくて呆然としてると、必死に訴えるおじさんの声が聞こえてきた。 「だから!!違うって言ってるだろが!!その子とその妹は俺の娘みたいなもんで、行きたい所があるって言うから一緒に来てるだけだって!!」 「嘘をつきなさい!!怪しいと思ったのよ、泣きながら食事してる娘を傍観してる父親がいるもんですか!!それにね、こんな可愛くて綺麗な子があんたみたいなおじさんの娘な訳がない!!」 「なっ……俺を不細工と言うのは構わねぇが嫁さんを馬鹿に済んじゃねぇっ!!アンタなんかよりよっぽど綺麗だ!!」 「あら、あたしを比較の対象にできちゃうレベル?それじゃあ、たかが知れてるわねあんたの奥さんは」 「このっ……ばばぁ……」 論点がずれ始めてる気がしたけど、どうでもよかった。 私は本当にばかだ、とんでもなくばかだ……。今、疑われてるのは私達じゃなくておじさんだった。勝手に勘違いして、おじさんを疑って、また困らせるようなことを言っちゃった。 もう、涙は出てない。大丈夫だ。 おばちゃんの下を離れ、おじさんを取り囲む兵士を遮るように立ち、声を上げる。 「本当ですっ!!私たちはこの人の娘です!!」 これでもかって叫んだ。叫んで、目を開けるとみんな首を傾げていて。 そして、おばちゃんが苦笑いを浮かべながら私に聞いてきた。 「え……あ、あれよ、言わされてるなら無理する必要はないわよ?ここには兵士さん一杯いるから嘘をいう事ないのよ?」 「違います、本当に娘です」 これは嘘。けど、これが正しいと思ったから罪悪感はない。 断言して、おばちゃんの顔がみるみる青ざめていくのが分かった。そんな中、隊長らしき兵士が大きく息を吐く。 「……もういい、帰るぞ。この頃、人攫いが増えているのは事実。警戒するのは大いに助かるが、少し、安直すぎたようですな」 「は、はい……すみませんでした……」 すごすごと頭を下げるおばちゃん。それを見ながら兵士が私たちに声をかけてくる。 「すまなかったな。ただ、人攫いがその数を増やしてるのも事実。今回の所はどうか、許してやってほしい」 言われ、おじさんはちらりと私を見ると、ふぅとため息を吐いて 「疑いが晴れたならどうでもいいさ。俺達は急いでるんだ、部屋に戻らせてもらうぞ」 手を引かれ、私たちはその場を後にした。
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