誕生日のち出会い

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―――――― 「おし、出発だ」 「おー」 手綱を一振り、馬車は走り始める。カラムの隣にはレイアが。スフィアはというと 「……すぅ」 荷台で毛布に包まって寝息を立てていた。心労のせいか、背を伸ばしたいためか、それは誰にも分からない。 「余程疲れてたんだろうな。お前は大丈夫なのか?」 辺りをきょろきょろ、疲れた様子もなく草原を眺めるレイア。カラムの問いにも元気良く頷く。 「はい、昨日はぐっすり寝れましたから」 「そうか。しかし、こんな何もない草原を見てて楽しいのか?」 「その……こんな風に旅をするのが楽しくって」 本心か、それとも表面上のものか、ともかくレイアは笑い、また景色に目を戻した。 「楽しい、か……」 その気持ちは理解できた。まだ見ぬ場所に期待に胸躍るその気持ち。だが、それは普通の子ならの話。母親が死んで、辛い環境で生きていた子供が、到底言える言葉には思えなかった。自分なら、無理だった。 「強すぎるのも考えもんだな……」 昨日、荷台であれだけ泣いてた子が一転してる。気を使ってるのかもしれない。ただ、カラムにはそれを言及する事なんてできなかった。できる事と言えば 「む、日も昇って来たな。そろそろ昼飯にするか。すまんがスフィアを起こしてきてくれ」 「はーい」 関わると決めた姉妹を無事に送り届ける事。それだけだった。 ―――――― 日数にして四日。旅は上々、山賊に会うこともなく、三人は無事にラスヴィエルに辿り着いた。 人の溢れる商業の街、それがこの街の通り名であった。貴族が多く住み、しかし税は少なく、付近は魔物がほとんど現れぬ土地で、商売には適した町であった。 「お姉ちゃん……」 「うん、この街にお父さんが……」 「ああ、そうなるな。さて……」 検問所で通行書を見せ終わったカラムは、二人に向き直る。 「付き合ってやりたいとこだが、俺も次の荷を届けるまで時間が無い。すまんな、面倒を見るつもりだったがここが限界みたいだ」
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