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「ううん、おじさんのお蔭でここまで来れたんだよ」
「はい、後は自分たちで何とかします」
レイアは微笑み、スフィアは力強く頷く。
「そうか……ならいいんだ。俺はもう行くが、前も言ったが思った以上に複雑な問題かもしれん。言いたくはないが、気を付けた方がいいかもしれないぞ」
カラムからすれば、事情を聞いたうえで、すんなりいくようには思えなかった。
二人もそれは分かっているのか、こくりと頷く。
「それでも、行くしかないんです」
スフィアの決意は揺るがない。それはレイアも同じで。カラムは苦笑しながら言う。
「本当に十歳以下の子供かと聞きたくなるな……ともかく、落ち着いたら何時でもいい、ユグースって町があるから顔を出しに来い。たらふく飯を出してやるから」
そしてカラムは馬車に乗り込み、二人にグーサインを向ける。
「お前たちとの旅、なかなか楽しかったぞ。頑張れ、諦めなければ必ず上手くいくさ」
「うん、またねおじさん」
「きっと、上手くやってみせます」
決意に満ちた表情に、もう励ましの言葉は必要ないとカラムは手をヒラヒラと振り、運び屋が荷を届けた際に告げる言葉を数日だけの娘たちに送る。
「ん、お前たちの未来に、多くの幸が有らんことを」
そうして馬車は段々と転回していき、カラムと馬車は商業地区へと向かっていった。
遠ざかっていく馬車を見ながら、レイアは寂しげに呟く。
「……行っちゃったね」
「うん……レイア、私たちも行こう」
「……うん」
カラムとは反対方向に二人は歩き出す。目指すは富裕層の集まる中心区、貴族街。
――――――
お世辞にも綺麗な服を着てない姉妹は、中心に向かうにつれ人の目を悪い意味で集めていた。それでも二人は歩いた。歩いて、進んで、大きな屋敷の前に辿り着いた。
富裕層の一角、エリフォス家。
玄関先で掃除をする使用人らしき女性に、スフィアは声をかける。
「すみません」
「え?あ……」
使用人はスフィアとレイアの姿に一瞬顔を顰めるも、すぐに笑顔を作り
「はい、何でございましょうか?」
「この屋敷の主に、『サナ・クレス』の娘が来たと伝えてもらえませんか」
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