誕生日のち出会い

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緊張というより畏れを思わせる固い動きで顔を上げるミーシャ。 「久し振りですね。鍛練は欠かしてませんか?」 変わらぬ笑顔。 「はい、1日足りとて欠かしたことは在りません」 震える笑顔。 会話の流れからして初代がミーシャの師匠であることは分かった。けど、この何とも言えぬ雰囲気は何だ? 「初代は、ミーシャの何の師匠なんですか?」 「そうですね、戦闘全般……特に近接戦闘の指南でしたね」 ビクリとミーシャが震え、額からは冷や汗まで流れ始める。 「……具体的には?」 「古舞術と云う、独自の派生を続ける戦闘術です。蝶の様に舞い、蜂の様に挿す……そのような戦いを目指し、一対一を主とします」 「ほぉ……」 確かに、城での戦いでミーシャは舞うように華麗に、かつ的確に急所を狙い戦っていた。エグいほどに。 「ミーシャは筋が良く、教える身としても楽しかったですよ。昔は小さかったですが、今では立派な女性ですね」 懐かしそうに初代が語る度に、ミーシャの表情が引きつった笑みに固定されてく。 何があったのか……あとで訊くか。 そこからは、初代によるミーシャの過去話、もとい秘話だったりが続けられ、ミーシャが死んだような顔になったりならなかったり…… 「時にミーシャ」 ふと、会話の途切れに思い出したように初代がミーシャを呼ぶ。 「は、はい」 「唐突ですが、翔くんに古舞術を教えてあげなさい」 「「……はい?」」 同時に首を傾ける俺とミーシャ。 「彼には基礎から学ぶ必要があります」 「けど、師匠……」 妙に渋るミーシャ。なに、そんな辛いの古舞術の修行って? 「えっと、どうしてですか初代?」 ハッキリ言わないミーシャに代わって訊くと、初代は優しく微笑み果てしなく衝撃的な言葉を放つ。 「何故か?ですか……それは―――― ――――君が死ぬ確率を十割から七割ほどにまで下げるためです」 「っ!!!?」 「わぉ」 ミーシャはとてつもなく驚愕!!みたいな顔になってるけど、俺としては一度死んでる身だけど死ぬと言われても実感が沸かないという。 けど十割かぁ、死ぬの確定だったのか俺。
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