誕生日のち出会い

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驚かない、というより驚けない俺に代わって、ミーシャが小声で尋ねる。 「どういう…こと……ですか?」 「そのままの意味です。今の段階で翔くんが仙道と戦えば、確実に死にます」 「そんな……!!」 「嘘ではありませんよ。これは、現実となる話です」 俺、現実的に死亡確定なう。 「けど、翔は……!!」 「強い、ですか?確かに、翔くんは強者の部類に入るでしょう。しかし、それは偽りの強さであって彼本人の強さではありません。基礎の無い者が、有る者に遠く及ばない事は貴女が良く判ってるのでは?」 「そ、それは……」 左右で飛び交う俺の生き死に話。 言葉尻窄みに俯くミーシャ。そして数秒、顔を上げたその瞳には確かな決意の炎。 「……分かりました。翔は私が鍛えます。死ぬなんて……死ぬ未来なんて、絶対に迎えさせない」 『死』、その言葉にはミーシャは変わらず敏感で、怒ったりスパルタモードに入るのは何時もそれが関わるときで。 「あの、ミーシャさん?」 恐る恐る尋ねるとミーシャは俺の目をしっかりと捉え、恐怖の微笑みを浮かべると優しく語りかけてくる。 「大丈夫、翔は死なせない。私が基礎から全部叩き込んであげるから。だから、一緒に頑張ろ?」 「やだ、怖い」 「ふざけないで、ご飯抜きにするよ」 「なにそれ酷い」 「それじゃあ明日から始めなきゃ。エアリィさんに地下訓練所使って良いか訊いてくるね」 俺の意見など右から左へ受け流し、ミーシャは早足にテーブル群の中心部に向かっていった。 しっかし…… 「初代、ミーシャを刺激しないでください」 あれは露骨だった。初代も敢えて禁句を使った様にさえ見えた。 少しの怒りはあった。ミーシャは思ってるより繊細だから、傷付きやすいから。ただ、それは初代も分かってるようで軽く頷き言う。 「少々、酷な物言いでした。しかし、君が実感できないのなら、死を体感してきたあの子に実感してもらうしかないのですよ。君がこのままでは死ぬのは本当の事ですから」 「…………」 理解できない者は、理解有る者に教わる。それはまるで勉強と同じ。 教わらなければ、勉強はできない。俺の場合は、また死ぬだけ。 本当に勉強と同じだ。いずれは向き合わないといけないところとか。
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