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――――――
後日談とおまけ――的な
ギルドの最上階。
少女の容姿をした、20半ばをもうすぐとした女性が魔方陣から姿を現した。
ランプだけが灯りの部屋で、奥に座る男性に少しの戸惑いの混ざった声をかける。
「初代……話とは?」
問われ、初代は何を言うでもなくスフィアを手招きする。
「?……は、はい。今すぐ」
不思議に思うもスフィアが初代を疑うわけもなく、命ぜられるがままに近付いていく。
そして椅子に座る初代の前まで来た瞬間、浮き上がるスフィアの体。
「ふぇ!?ちょ、えっ!?」
ただ浮き上がったならスフィアはこんな情けない声を上げやしない。理由は単純、初代に脇の下に手を入れられ持ち上げられたから。
なすがままに体を反転させられ、初代の太ももにぽすりと下ろされた。
「……あ、あの、初代……これは一体……!?」
困惑、驚愕、羞恥、様々な感情が籠ったスフィアの言葉に、初代は優しく答える。
「貴女を蔑ろにしていたつもりは無かったのですが、どうやら、私の配慮が足りてなかったようなので」
言葉の真意が分からず戸惑うスフィアに更なる衝撃。
「そ、それはどういう――――――はうっ!!!?」
ギュッと抱き締められた。
片手を腹部に回し、もう片方を頭に持っていき優しく撫でながら初代はスフィアに語りかける。
「スフィアは我慢を隠すのが上手ですね。私は言われるまで勘違いをしていました。長く生きているといっても、未々ですね」
「…………!!」
そこまで聞いて、スフィアは理解した。この現状に持っていった一人の少年に。
ただ、その事に気付き先手を打つのは年の功が為せる技か。
「翔くんは悪くありませんよ。寧ろ、私は感謝すらしています。それともスフィアは、こういうのは嫌いでしたか?」
「…………」
嫌なわけがなかった。いや、ずっと心の底で望んでいた。父親に甘えたいという気持ちが消えた日は1日も無かった。
暖かく、心から安心できたあの日に戻ったようで……満たされる様な感覚に心が震えた。
零れ落ちそうになる何かを必死に耐え、スフィアは小声で喋る。
「出来るなら、今日はこのまま私を……」
消え入る声に、初代は答える。
「はい、喜んで」
―――暗い室内に、二つの人影。それは親子の姿。
優しげな父親と、抱き締められ、幸せそうに微笑む娘の姿が、其処にはあった。
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