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――――――
おまけ
宴の最中、クエストに出ていた千夜とハンクのお話(千夜視点)
極寒の氷山の頂で、アイスドラゴンと対峙してもう何分が経ったか?
寒い……凍りついたように指の感覚さえ無くなりかけてる。だが私はこんなところで―――
「おい千夜、無理はするなよー。キツかったら早めにギブアップ出来る奴が強者だ」
「心配は無用!!私はこんなところで負けるつもりはない!!」
「そうか、危なくなったらこのかまくらまで来い。交代してやる。しかし美味いなこの酒……」
「行くぞぉー!!」
叫んで、自分を鼓舞する。
実家から秘密裏に取り寄せた吟醸酒と交換でありついた修行の機会。
付き合ってくれてるグラシエルの恩義に報いるためにも、負けるわけには―――そうだ、これぐらいの魔物も倒せないようでは戸神には一生勝てない。
―――あれは一月以上前
頼みに頼んで漕ぎ着けた戸神との一対一の真剣勝負。
腕相撲での雪辱を果たすべく戦った地下訓練所での一騎討ち。
それがどうだ、魔武器を出す前までは対等な戦いができてたからといって舞い上がっていたら、魔武器の勝負になった瞬間手も足も出なかった。
私の魔武器『裂傀剣』は叩き折られ、魔力は底を尽き
……見事なまでに完敗だった。
同年代で勝てなかったのはミーシャに続いて二人目だった。
ただあれほど無様な負けではなかった。悔しかった……積み重ねてきたものが崩れていった感覚を今でも覚えている。
そして何より無様だったのは他でもない、泣きながら再戦を申し込んだことだ。
明確に言えば、私は気を失ったから覚えてない。レイアが教えてくれたのだ。
私が涙を流しながら戸神のズボンを持ち、縋るように頼んでいた……と。
戸神は再戦を受け入れたらしいが、あれ以来あいつとは会っていない。
……いや、私が避けてるのだ。情けなくて、恥ずかしくて、顔を見せる事を拒んだ。
そんな自分が余計に情けなくて、決意した高ランククエストでの修行。
そう、だから、こんなところで―――
「負けていられるかぁっ!!」
両手の剣に魔力をありったけ込め、迫る輝く息を切り裂き道を作る。
「そこだぁあああ!!」
現れた道を駆ける。
剣を重ね、念じるのは生み出した新たな秘技。
「裂傀剣『椿』!!」
2本の短剣が一振りの刀に変化する。
「終わりだ―――」
飛び上がり、体の命ずるがままに一閃。それで、終わりだった。
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