誕生日のち出会い

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刀を短剣に戻し、切り落とした物を拾う。 出来た……成功だ――― 「『アイスドラゴンの角一本の採取』―――完了だ」 自分が着実に強くなってるのが分かる。これなら戸神にも…… 「おい千夜!!角を取ったなら早くこっちに来い!!」 そうだ、アイスドラゴン本体はまだ生きている。早く逃げな…け……あれ? 「力が……入らない……」 足が動かない……手も…… 倒れて、顔だけ動かすと、私を踏みつけようと迫る巨大な足。 逃げれない……これは…… 動かそうにも麻痺したように言うことを聞かない。寸前まで迫る圧力に目を瞑る―――けど、痛みは一向に訪れない。 「ったく、余力は残しとくもんだぞ。……しかし、酒の摘まみになる良い戦いだった。合格点はやろう」 声に目を開ける。視界に広がる光景は、異様ともいえるものだった。 片手一つでグラシエルがドラゴンの巨体を受け止めている。 「グラシエル……」 「後は任せろ」 ボールでも投げるように軽くドラゴンを押し退け、正面に立った。 「アイスドラゴン、俺達はこれ以上やり合うつもりはない。まあ、気が済まないっていうなら――― ―――相手をしても構わんぞ」 久しく見たグラシエルの魔力全力解放。 その威風堂々たる佇まいと黄金色の魔力に、アイスドラゴンは私を一瞥し、翼を羽ばたかせ空へと昇っていった。 私とは比較にならないその濃度、魔力量……敵わないな。 「済まない、駄目だった……」 一人でやれると意気込んでこの体たらく。 だが、グラシエルは豪快に笑い飛ばした。 「ハッハ!!気にするな、負けることも必要だ。なに、アイスドラゴンの角を斬ったんだ。俺でもてこずる代物だ。自信を持て、お前は成長してる」 「そうだろうか……」 「自信が持てないなら、付けるだけだ。ほれ、次は『グラシスヴァジュラの鉱石の採取』だ。気合い入れていくぞ」 酒を一口、グラシエルは私を起き上がらせ高らかに笑う。 そうだ、この程度で弱音を吐いてる暇は無い。待ってろ、戸神。今度は必ずお前に勝ってみせるからな――― ―――――― 所代わって、天心の翔の部屋 「―――ぬあぁっ!?」 「うわっ!?ビックリしたぁ……どうしたの翔?」 「あ、いや、すまんフー。何か強烈な悪寒が……な」 「風邪?気を付けなきゃ駄目だよ」 「うい、気を付ける」 そんなことがあったとか。
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