出会いのち妖精界

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うるさいと怒りながらも、八尋はもう二つの小瓶を取り出す。 「一回の効果時間は約半日、量は指で摘まむぐらいだから。これだけあれば足りると思う」 「なに、飲むのこれを?」 「違う、頭上高くに振り撒いて全身に掛けるんだ。こんな風にな」 八尋は四つ目の小瓶を取り出し蓋を開けると、掌に少量乗せて振り撒き実演して見せた。 桃色の粉が空中に飛び、落ちながら八尋のフードに付着していく。 特に特殊な動作は要らないのか。やり方は分かった、けどだ 「何も変わった感じはしないんだが」 寧ろ粉がラメみたくキラキラ反射して目立つんじゃないかこれ? そんな疑問に八尋はチッチと指を振り 「人同士で違いなんて分かるわけ無いだろ?他種族や魔物から判らなくするための物なんだから」 「そんなもんなのかねぇ。で、副作用は?」 「……ん?」 「可愛らしく首を傾けるなあざとい。副作用はと聞いてるんだ」 利点だけの薬なんて有りはしない。 ジト目で見ること数秒、八尋は観念したように参ったのポーズをすると開いていた小瓶の中身を全て自分にぶっかけた。 「……なっ!?」 一瞬だった。 粉を被った八尋が気付いたら目の前から消えていた。 「マジか!?なに、全部使うと透明に成れるのかそれ!?」 もし他のお客さんが来たとしたら、間違いなく戸神翔は狂ったと断言するだろう勢いで何も居ない空間に叫びに近い声を上げると、八尋のもといた場所から声が。 『似てるけどちょっと違うかな。試しに目の前に居るから目を凝らして視てみなよ』 言われ、従いじっくり眺めると、ぼんやりと、本当にぼんやりと八尋っぽいシルエットが見えるようで、やっぱ見えない。 「見えた気がしたけど分からん。なんだこれ?」 『この消臭香は大量に付着すると、その人の存在を希薄化するんだ。分かりやすく言えば極度に影が薄くなるんだ』 「いや、見えないとか影が薄いとかの次元じゃないだろ」 『へへっ、凄いだろ?』 「いや、誉めたつもりは無いが、確かに凄いな。これが副作用か?」 『そ、これだけ。安心したか?』 質の悪い副作用では無いようだし、そこは良いんだか一つ心配な事はある。 「全部使ったらどれくらい希薄化するんだ?」 『うーん、2日ぐらいで治ったはず』 「オーケー。じゃあその間、お前どうするんだ?」 『……あ』 「やっちまったな」 声だけ聞こえて店主が見えないとか、商売なんて出来たもんじゃない。
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