出会いのち妖精界

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「どうすんだ?対処法あるのか?そのフード脱ぐとか、洗うとかさ」 『いや、駄目なんだ。粉の効力自体は俺の体にも染み込んでて、しかも対防水性能付きなんだ』 自慢げに言われても、その時点でそれは世間一般でいう『粉』では無い気がする。 「じゃあどうすんだ?」 『諦めてあと2日過ごすかな。これはこれで面白いし』 顔は見えないが、笑ってるんだろうなぁ。 「ポジティブなこって。そういや、幾らなんだこれ?」 『お金?ああいいよ、払わなくても』 「…………!!」 『そんな露骨に顔をキラキラさせるな。それとその視線の先に俺は居ないぞ』 ホントだ、左の棚の薬が動いてる。それにしても…… 「どうしたよ、良いことでもあったのか?」 『逆にストーカーに悩まされる日々なんだけどな。お金は良いから、その代わりと言ってはあれだけど……』 小さな木箱がカウンター下からスッと出てくると、独りでに蓋が開き小瓶が宙に浮かび次々と箱に入っていく。 どう見てもポルターガイストだ。 「で、代わりって?」 訊くと、八尋は期待の籠った声で言う。 『そんな難しい頼みじゃないんだ。向こうに行ったとき採ってきて欲しいんだよ』 「何を?」 『妖精草』 ……知らん。 「特徴は?」 『茎が白で葉が黄色の何処にでも生えてる雑草らしいんだ』 「雑草って……アバウトだな」 『俺も師匠に一度だけ見せてもらっただけなんだよ。妖精草はな、粉末にして他の薬に調合することでその効果を飛躍的に向上させるものなんだ。他にも効果があるみたいで、一度でいいから調べてみたいと思ってたんだ』 調合師の性なのか、熱く語り始める八尋。 『頼むよ、こんなチャンス二度と無いかもしれないんだ ―――友達が妖精界に行くなんて』
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