出会いのち妖精界

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「ああ、了解した―――」 翔は快諾し、妖精界に行くための準備を始めたのだが…… 事が起きたのは三日前 翔がフレリアと一緒にギルドに妖精界に向かうことを告げに行った時のことだった。 ギルド長の部屋では、叫びに近い声が上がっていた。 「本当か!?その話は、妖精界に行くのは本当なのかっ!?」 翔からしたら、らしくなく興奮した様子で立ち上がるスフィア。 「だから、そう言ってるじゃないですか」 「わ……」 「はい?」 「私も……私も一緒に行っては駄目か!?」 まさかの申し出に二人は顔を見合わせた。 「……そこんとこは家の子次第なんですけど。フー、どうだ?」 肩に座る少女は、うーんと口元に手を当て唸る。 「ミーシャも行くわけだし、私がいれば大丈夫だとは思うけど……」 「何だ!?ミーシャも行くのか?」 「話したら、行くと言って聞かなくて。フーも承諾したもので」 翔はため息しつつ思い出す。フレリアと話した翌日、ミーシャに旅立つ事を伝えると『私も家族だから』と行くと断固として言い張ったのだ。 どうなるかも、何日掛かるかも分からない。それでも意志は変わらず、頼みの店長は『行く機会なんてまたと無いだろ。行ってこい。店は気にするな』 それだけ。 放任主義もいいとこだった。 「まあ、ミーシャは良いですけど、マスターは此処を離れても良いんですか?」 「うっ、そ、それは……」 そんなたじろぐスフィアに助け船が。 『それなら、心配する必要は有りません』 部屋に響く声。 窓の開いてない室内に微風が流れ、次にはスフィアの背後に一人の紳士の姿。 優しくスフィアの髪を撫でながら、タキシードを着こなした男性は言う。 「私がマスターとしての仕事はこなしておきましょう。ですから翔くん、スフィアも行かせてあげてはくれませんか?」 「あ、あの、しょ、初代?そ、それは……」 「スフィア、我慢することはありません。小さい頃から、妖精界に行くのが夢だったのですから 「なっ!?しょ、初代!?」 顔を真っ赤にし、驚き一杯叫ぶスフィアを無視し、初代は続ける。 「どうでしょう翔くん、駄目ですか?」 微笑み問われ、翔は頭を二度ほど掻いて横を見る。どうする?と視線で訊いてみると、フレリアはただ笑った。 それを確認し、翔は初代に向き直る。 「初代の頼みを断れませんよ。それにフーも良いと言ってますから」
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