出会いのち妖精界

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「ほ、本当かっ!?」 「え、えぇ……」 身を乗り出し、確めてくるスフィアに今度は翔がたじろいでいた。 付き合いが長くなり、その人と共に過ごす時間が増していくほど、見えてなかったその人の意外な一面が見えてくる。 今も、そうだった。 子供のように無邪気に、隠すことなく喜びを表に出す。そんなスフィアを翔は初めて見た。 普段から仏頂面なのがマスター、出会った頃はそれが第一印象で。今はお互いの事を話せる、まだ壁は在るけれど、それなりに気心が知れた少し年の離れた友人。 変わっていく関係は、目まぐるしく表情も変化させる。沢山の怒り、悲しみ、そして笑い。 自分の斜め前で、肩を降りた妖精に感謝を述べる友人に、翔は小さく笑った。 「それで、いつ頃に此処を発つのだ?」 話は変わり、旅立つ日程の話題に。 ちゃんと決めていなかったと翔は肩に眼を向ける。 「いつなら大丈夫なんだ?」 「多分いつでも良いと思うけど……私も準備とか、ソフィにも言っておきたいし……」 「ふむ……」 城まではフーなら1日で着く。泊まるとしても帰宅まで3日。準備も合わせて……と、そんな翔が出したのは切り良くいこうと指を7本。 「じゃあ一週間後でどうだ?」 「うん、それなら大丈夫だよ」 「良し、じゃあマスターもそれで良いですか?」 「うむ、一週間後だな。私も準備をしておく」 嬉しさを隠しきれずに、そわそわと何を用意するか呟くスフィアに、フレリアは翔を見て言う。 「……なんか、楽しいね」 その表情は父親と会うことに不安を感じていたあの日とは変わって、曇りの無い笑顔だった。 その言葉に少年は同意の声を上げる。 「そうだな、俺もだ」 これで決定!とまるで旅行前のようなテンションになっていく三人に、マスター席でスラスラと書類を片していた初代が付け足す。 「話が纏まったところすみませんが、扉の向こうで盗み聞きしてる誰かさんも、その旅に同行したいようですよ」 「え?」 『ばれてたか。敵わないな全く』 扉の外から聞こえる声に皆が目を向ける。 ゆっくりと開き、入ってきた男に翔は驚いた。 「リックさん!?」 「よぉ翔っち。まあ、初代が言ってた通りなんだが……」 言い淀み、恥ずかしそうに頬を掻きながらリックは口を開く。 「俺も、妖精界に連れてってくれないか?」
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