出会いのち妖精界

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そして更に10分後――― 菓子もなくなり、翔は紅茶でまったり、フレリアは瞼を擦りながら二階に上がった頃。ピクッと身震い一つ、アリシアが二度目の石化解除を果たし目を覚ました。 「あ、あれ……私は……」 「ああ、やっと反応した」 「あれ、翔さん?私は……」 尚もキョロキョロと、事態を把握しきれてないアリシアに、翔は淹れなおした紅茶を渡す。 「はい、これ。名前を聞いてフリーズしてた。ここまで驚かれるとは思わなかった」 「す、すみません……」 「いいよ。それよりどう、落ち着いた?」 アリシアは渡された紅茶を口に含み、胸を撫で下ろす。 「は、はい。急な話で、ビックリしちゃって。もう、大丈夫です」 「そっか。それじゃ一応名前を伏せて、あそこに行くって話どうする?」 再度問われ、アリシアは神妙な面持ちで言う。 「……本当に行くんですね」 冗談だと思っていた。現実味の無い、それこそ夢みたいな話だった。世界が始まって、妖精との交流が盛んであった遥か昔はその世界に訪れた人は多く存在した。 しかしそこから妖精は人の醜さに触れ、妖精たちは殆ど交流を絶ち切り、今では会うことさえ奇跡と言えた。 そんななか、翔がギルドで妖精を連れていた事はアリシアにとって驚愕の出来事だった。人が妖精と連れ添う光景は、絵本でしか見れないものと思っていたのに。 ギルドに入った当初の翔のサポートをしたのも、親切心が七割、妖精が心を許した人がどんな人かと好奇心からが三割で。 そして触れ合い、何と無くだが理解した。翔の人柄に、その自由さに共感して。 今では良き友人で、子供たちの兄のような存在であり、自分にとっても…… そして今、持ち掛けられた話は、喉から手が出るほど嬉しい話だった。 すぐにでも言いたかった『行きたい』と、『私も連れてってほしい』と。しかし、その言葉をアリシアは呑み込む。 「……翔さん、何日掛かるかは分かっていないんですよね?」 「あぁ、うん。分からないかな」 その答えにアリシアは一瞬だけ、見えないように俯き、唇を噛み締めて、想いを振り払い心を決めて顔を上げる。 「それなら……私は行くことは出来ません」
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