5171人が本棚に入れています
本棚に追加
アリシアは黙る。子供たちにまで気を使わせるほど張っていたとは思わない。
けど、そう見られる様な振る舞いをしてたのかもしれない。俯き、悩み、そしてアリシアはスッと顔を上げて翔の眼を見て言う。
「翔さん、私も行っても……」
一度は断った身、その先の言葉が続かない。気後れし、またも俯くアリシアに下手な演技で翔は空空しく二階を指差し
「フーがさ、上で……多分またアリシアの布団で寝てると思うんだ。最終決定権はフーにあるから、起こすついでに俺に訊こうとした事を訊いてくれ。まあ、答えは決まってるようなもんだけど」
そう笑い掛けられ、アリシアはパッと顔を上げると普段と変わらぬ笑みを浮かべる。
「翔さん……。分かりました。それでは、フレリアちゃんを起こしてきます」
そのまま笑顔でレイアの前を通り過ぎ、二階へと上がっていた。そして姿が消えて上から扉の開く音が聞こえたあたりで翔は安堵し一息つく。
「何とかなった……かな」
その言葉にレイアも頷く。
「そうね。ただ、ちょっと臭かったかしら」
少しからかうように微笑み、レイアはアリシアの座っていた椅子に腰を下ろした。
翔は臭いと言われ、少し傷付いたのか目線を斜め下に向け
「あぁ……言わない約束ですってそれは」
「ふふ、冗談よ」
置いてあった紅茶を一口、上品に笑うレイアに翔は先程から気になっていた事を訊く。
「俺達が妖精界に行くって話、マスター達から聞いたんですか?」
「ええ、そうよ。それでリックがアリシアもと言ったって聞いたから、先手を打っておいたわ」
「ほぉ……」
相も変らぬ全てを見通したような行動。その言葉に翔は素直に尊敬していた。アリシアの性格を理解しているからこその対応、その迅速さ、普通なら即決して出来るものでは無かった。
「流石ですね……けど、レイアさんは良いんですか?」
「あら、何の話?」
「妖精界、興味はない感じで?」
そこまで聞いてレイアは口元に手を置き数秒。まあいいわ、と口に出して翔に対し意外な言葉を放った。
「私はね、行ったことあるのよ。妖精界に」
最初のコメントを投稿しよう!