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出発の日は何事もなく訪れた。メンバーは六人、ミーシャとフー以外全員が手提げバックやリュック等の荷を持っていた。
見る人が見ればただのピクニック集団の項目に該当するような格好……でもなく、シスター服だけは浮いてる気もしたり。
そして今は既に街を離れ、極彩鳥のいた西の山の、それも巣のあった場所に集まっていた。
フー曰く、「妖精界とのゲートを開くには澄んだ魔力が必要なの」との説明を受け選ばれたのがこの場所だった。
皆も来てから納得の表情をしてたが、俺にはさっぱりで。
今は全員がフーのゲート繋ぎに目を奪われている。何時かの様に球状に魔力を纏い光を放ちながら、大の大人が悠々と入れる程の縦長の楕円を描いていく。
それは徐々に輝きを増していき、光のゲートが形を成した。フーは仕上げと言わんばかりに頭上高く跳びあがり、楕円の中心を光の筋を残しながら通り抜けた。
「「「「「おぉー……」」」」」
皆から感嘆の声が上がった。俺もだけど。
カッと眩き、出来上がったゲートはマジックミラーの様に、妖精界らしき風景を朧げに映し出していた。
揺らめく先の光景は、何とも神秘的で。
「……すごいな、妖精っぽい」
ボケてみると、フーはゲートの前に降りてきて、疲れたのか汗を拭う仕草で
「……少し疲れたから、突っ込まないよ」
呆れ気味に言った。そのままふらふらと飛んで行き、ミーシャの頭にポトリと落ちる。
「人間用のゲートは作ったこと無かったから、魔力の加減が分からなくって。ちょっと休ませて……」
「うん、お疲れ様。ゆっくりしてて良いよ」
頭上で伸びるフーを一撫で、ミーシャは微笑む。
そこで見惚れていたマスターが疑問を口にする。
「このまま、入って行って良いものなのか?」
興奮交じりの声に、フーは声だけで答える。
「大丈夫……危険は、ないよ……」
その言葉に、リックさんはそうかと笑い言う。
「頑張ったなチビッ子。よし、それじゃあ行くか」
ふと「チビじゃないもん……」、と力無く反論する声が聞こえたり。
そして俺たちは緊張と期待を胸に、ゲートへと足を踏み入れた――――――
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