妖精界のち親子

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光の中を一歩、一歩、ゆっくりと歩いていく。先に見える景色を目指し、光に包まれる様な感覚の中、俺はゲート内を進んでいた。 周りには誰もいない、いや、居るのかもしれないが周りは光だけで。 そのまま出口まで無心で歩き続け、気付けば―――― 「―――っ、ここが……」 見た事の無い景色が広がっていた。 淡い黄金色の空に、白と黒の太陽のような星が離れた位置で存在し、見た事の無い魔法陣が疎らに空に展開されていた。 あまりにも幻想的だった。想像していた花畑一杯みたいな世界ではなかった。けど、間違いなく俺は見惚れている。広大で、雄大で、圧倒される。 数分は経ったか、ただ前を眺め続けていると背後から漏らすように「すごい……」と呟くミーシャの声が聞こえてきた。 パッと振り向き、その時やっと気づいた。俺は今、大きな草原の丘に立っていた。 360度、景色が見渡せる丘だった。ミーシャも、俺を認識するよりも景色に目が行っている。 そして数分おきに一人、また一人とゲートから現れて、皆が景色に目を奪われていた。 未だに俺もすごいの表現しか思い浮かばない。 「……あれ?」 そしてふと気が付く。フーだけがこの場所にいないと。ミーシャの頭に居た筈だが見当たらない。 2番目に来たミーシャは景色を見ることを終え、きょろきょろと何か辺りを探していて。 「ミーシャ、どうした?」 「あ……うん、フーちゃんが見当たらなくって……」 「俺も気になってたんだけど、一体何処に……ん?」 気を巡らせてた時だった。少し後ろの方でゲートが現れる。俺はその時、フーが飛び出てくると予想していた。けどそれは間違いだった。 ゲートから出てきたのは滑らかな細足に水色のワンピースを着た一人の少女。ツインテールを靡かせて羽を二、三度羽ばたかせ指を絡めて大きく伸びをする。 「「…………」」 俺とミーシャは景色に惑わされたのかと目を擦り、けど縮まらぬ少女に唖然とした。 姿形は紛う事無き我らが家族、フレリアことフーだ。 しかしその背丈は、ミーシャと比べ遜色がない。 「フー……なのか?」 思わず訊くと、フーは俺を見るとパッと笑顔を見せると、早足で近付いてきて俺の前に立ち 「ふふん、どう翔?私、チビじゃないでしょ?」 どうだと言わんばかりに、無い胸を張った。これは本物だ。
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