妖精界のち親子

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「チビじゃ、ないけど……ん?待った。整理が追いつかないぞ」 混乱する俺達に、フーはこうなった経緯の説明を始める。 「ゲートの中で光に包まれたでしょ?あれは人間を妖精界に適合した背丈に変化させるものなの」 「それじゃ何だ?これが妖精界基準の俺達の伸長と?」 「うん、そうだよ」 原理は理解できないが、今に始まった事でもないし理由は分かる。そのままの伸長で人がこの世界に来たら巨人の進行でしかない。 しかしなぁ…… 「むにゃ!?」 うずうずと溜まる何かを抑えきれず、フーの頬っぺたを掴み、引っ張ったり伸ばしたり、羽を突いたりペシぺシと叩いてみる。 肌の感触は人と同じなんだと思っていると、触れていた手が振り払われる。 「レディの体を玩具にしないでっ!!」 フーは、むーと言う擬音が見えてきそうな顔で頬を膨らまし怒っていた。 「すまんすまん。つい、なんか信じられなくてな。けど何だ、さっきから無言でフーの頭を撫でてるミーシャはお咎めなしか?」 説明終わりから夢遊病患者の如く、無意識でふらふらとフーの後ろに回り込み、包むように頭を撫で続けているミーシャ。 大丈夫だろうか?目が逝ってる気さえする。 「ミーシャは良いの。気持ち良いから」 気持ちよさそうに目を細めるフー。これを差別と言わずして何が差別か。 背が同じくらいになっても何も変わりの無い俺の家族は、数分後には異変に気付いた三人に取り囲まれていて。 「翔さん、ミーシャさん、わ、私も頭を撫でてもいいですか?」 「私より……大きい…………」 「ま、俺からしたら結局はチビっ子だな」 遠巻きに眺める俺とミーシャに、アリシアはそわそわとこっちを見たりフーを見たりと忙しなく。 マスターは自分より遥かに背の高いフーを見ながらぼそりと呟き。 リックさんは相変わらず煽るような事を言っていて。 三人に囲まれて嬉しそうに笑うフレリアに、俺は一言。 「楽しそうだな」 独り言と処理されても良かったけど、ミーシャは律儀に俺の言葉を拾う。 「そうだね。……多分だけど、私たちと同じ目線で話せる事が嬉しいんだと思う。前に、そういう事を言ってたから」 「ふーん……」 それは知らなんだ。やっぱり、小っちゃい小っちゃい言われるのを気にしてたのか。
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