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フリーのデザイナーをしている和也の仕事が一段落ついたので二人は街へ買い物に出かけた。
もっとお互いを近くに感じていたいという思いから二人でお揃いの指輪が欲しいと和也は提案した。
ゆっくりゆっくりと亜季の右手を握りながら歩調に合わせ他愛もない会話にケラケラと和也は笑い街の景色に溶け込んでいた。
デパートに百貨店それから路面店などあちこち指輪を見て回った。
最初は亜季のペースに合わせながら歩いてはいたが次第に亜季が和也の歩くペースに合わせるようになった。
「ふふっ。
和也さんったら、だらしないですよ~。
少し歩いただけで根をあげちゃって。」
「もう何軒も歩き回ってるからさすがに疲れたよ~。
どこかで、お茶にしようよ。」
ヘトヘトの和也が亜季にお願いするが
「いけません。指輪が決まるまでお茶はしません。
あのお店の指輪が素敵だったな~。でもあっちの指輪も可愛いし。
ん~悩みますわ。」
女の子が買い物をする時の底が見えない元気に和也は驚いた。
そもそも亜季は右の手足が少し不自由なのだ――
そんな不自由さを忘れ疲れも吹き飛ばすくらいに亜季は二人でペアリングをつける事を心から喜んでいた。二人で納得して指輪を決めた時の亜季の笑顔はとても可愛く、他の何かと対比しようがないほどの美しく、和也の目には映った。
買い物を済ませ桜並木を通り笑顔で手をつなぎ帰路につく二人。
優しい風に飛ばされた桜の花弁が宙を舞う。
そんな心地よい風が吹く中、黒くて美しい髪を靡かせ笑顔だった亜季は急に歩みを止めた――
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