2008年~春~

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「・・き。」 「あ・・き。」 「あき。亜季。」 何度も名前を呼ばれてることに気がついた。 「どうしたんだよ? やっぱり歩き回ったから亜季も疲れてたんだろ。」 少し意地悪な口調で聞こえた。 亜季は意地悪な声がする方へ顔を振り返ったが少し驚いた。 見つめた先にある和也の顔は口元が笑ってはいたが、とても真剣な眼差しをしていたのだ。 「ごめんなさい。 私、少し疲れたのかな。 いつもボーってしてる和也さんに言われちゃいましたね。」 真剣な眼差しに焦るように返事をした。 立ち止まったのは、ほんの数秒だっただろうか。 なぜ自分が急に歩みを止めたのかは分からなかった。 亜季自身も体調と疲れのせいだと思った。 「さぁ、行きましょう。」 また歩き出す亜季の背中を見つめ和也は睨むような鋭い目つきで辺りを見回してから亜季の右手を握った。 この亜季の手から伝わる温かいぬくもりを失いたくない一心で無言のまま、いつもより強くそして優しく手を握りしめた。 『亜季は俺のもの。』 『永遠に。』
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