ー石榴ー

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映画館に入りかけたところで、声をかけられた。 「独りで映画、観られるんですか?」 身長は180㎝ほどだろうか、小さな私から見ればかなり大きい、17、18歳の男の子だ。 有名なスポーツメーカーのジャージを着ているのだか、なかなか似合っている。初めは無視をした。 私にはこんな若い男の子の知り合いはいないし、どことなく恐怖を感じたのだ。関わらない方が良い。そう思った。 その時、さっと腕が私に向かって延びてきた。 「昔、付き合ってたなかなのに、僕のこと忘れちゃいましたか。」 そう言って、短い私の髪をくしゃくしゃと撫でた。 その瞬間、私の中の記憶が一気に溢れかえる。 高校生の時に一度だけ付き合った、彼のこと。 それが、千葉くんだ。
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