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「待って…」
女の子が寝ているベッドの方から声が聞こえた。
俺が動かないでいるとまた声をかけられた。
「待ってってのが聞こえないの?」
今度は少し低い声。俺は返答してやった。
「なんだよ?」
こちらもいつもより低めで返答する。 すると女の子の方も喋りだした。
「あたしをたすけてくれたんだよね?」 俺は軽く「あぁ」と返事をした。
「お礼とか…しなきゃね……」
「別にいいよ、礼なんて」
非日常をくれるなら貰うが、そんなのをくれるやつなんて居るわけがない。
そしてまた女の子が喋りだした。
「そういえばあたし、あなたの顔とか見てないのよね…」
確かに。ぶつかったのは突然だったワケで、あのあと転げ落ちたからな。
傷とか無いのが奇跡と今言える。
「あ~、あん時は突然だったからなぁ~」
つかこいつは怪我とかねぇのかよ。
もし怪我とかあって、“あなたのせい”とか言われても困るよな。
一応聞くか
「あのさぁ?傷とかねぇの?」
「ないわよ…多分」
多分ってなんだよ多分って。
「それよりもあなたの顔見せてよね?」 怪我はどーでもいいのか。
“顔見せて”と言われたので女の子が寝ているであろうベッドに向かい、ゆっくりとカーテンを開けた。
女の子は無表情でこう言った。
「普通ね」
普通で悪かったな。日常も普通であれば顔も普通。
そして女の子は意外な発言をした。
「中伊桂二」
俺は一瞬耳を疑ったがそれは女の子がちゃんと発言をした言葉。俺は自然と声が出ていた。
「…何で知ってんだよ」
それは…、“中伊桂二”は俺の名前だからだ。
勿論女の子と会うのははじめてのはず。 「私は昨日転校してきたばかりで生徒会長に任命されたの」
なるほどな。
この学校の生徒名簿は一人一人顔写真があるのだ。
そして生徒会長がその名簿に目を通さないといけないわけだよ。
それで女の子の方は転校してきたばかりであって俺は顔を知らなかったが女の子は俺を知っていたとさ。
てか転校してきたばかりで生徒会長ってすげぇな。一体何があったんだか…。
「つかさ、俺の顔見たんだからもう行っていいか?」
廊下とかに誰も居ないのが気になりまくりだけど。
「まだダメよ」
ダメなのかよ。
「はいはい、顔の次はなんですか?」
俺は呆れながら言うと
「今廊下…いえ、学校に誰も居ないでしょう?」
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