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「後五分……」
聞きなれた声を尻目に僕は二度寝を決め込もうとする。
『しかし逃げ切れなかった』
そう言い表すのが的確かはわからないが、僕をくるみ込んでいた毛布はいとも容易く剥ぎ取られる。
「早く準備なさい。今日は貴方の16歳の誕生日。父の後を追い旅に出る日でしょう」
「それはあんたが勝手に決めた設定でしょう!」……等と言える訳もなく、僕は今日。この家から旅立たなければならないらしい。
せかせかと動く母は、「早くご飯食べて王様に挨拶してきなさいな」と言うと僕の部屋を後にする。
僕の名前は『勇者』。当て付けのような名前だけどさ……実は気に入って……る訳はない。
この名前のせいで……おっと。早く準備しないとあの鬼に殺されてしまうな。
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