一章 始動。開始。

3/16
前へ
/38ページ
次へ
その日はラッキーだった。担任の小林満男(こばやしみつお)が、いつもなら 「時間も守れない奴が一体何を護れるのだ?」 と遅刻した生徒を罵倒するはずが、数秒遅れた俺を 「間違えろ。失敗しろ。それが次に繋がる。」 と、何故か激励した。呆気にとられた俺含む生徒一同。その数四十名。 小林先生が居なくなった教室は騒がしさをコンマ一秒で発生させる。ちょくちょく聞こえた女子の話によれば、どうやら縁談の席で失敗したらしい。あの人も歳だからなぁ。そろそろ決めないとと思っているんだろう。まぁ近年晩婚化は進んでいるし、気長に頑張ってほしいと一人の男として応援しようか。 さて。 と特に意味はないが呟いた俺に今日もまたこいつがきた。 「ラッキーだったなぁ。康次。」 そいつは制服のボタンをすべてはずし、中シャツも堂々とだしている。いくら今の小林先生もそれは注意するぞ。 ちなみに康次とは、俺のことだ。フルネームで春川康次(はるかわこうじ)という。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加