壁はゆめの五階で、どこにもゆけないいっぱいのぼくを知っていた

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あまりに意味が分からなくて、ぼくは気がヘンになりそうだった。ぼくはさっきまで、間違いなくトキワシティのポケモンセンターにいたはずなのに。絶対に、間違いなく、トキワシティのポケモンセンターにいたはずなのに。 ぼくが今いるのは、紛れも無くニビシティだ。周りの風景もそうだし、看板を見ても…… (……あれ?) ぼくはふと、看板に目を止めた。そこには、こんなことが書かれていた。   「ぜんりょくをつくしたんだ。くいはない!」   ……街の案内が書かれているはずの看板には、まったく意味の分からないことが書かれていた。それが余計に薄気味悪くて、ぼくには訳が分からなかった。 だから、ぼくはわざと大きめの声で、 「街の看板にいたずらするなんて、ひどい人がいるんだなあ」 そんなことを言って、この意味の分からない言葉を、落書きにしてしまうことにした。そうだ。こんなことになったのは、きっと誰かが落書きをしたからに違いない。そう思うと、ぼくは少し落ち着くことができた。 (まったく、ひどい人がいるんだなあ) そう思って、ぼくはもう一度看板を見てみた。それが落書きであることを、もう一回確かめておきたかったのだ。 ぼくは、看板の正面に立った。   「それいじょう もちきれませんね。いらないモノを せいりしてください」
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