78人が本棚に入れています
本棚に追加
(どうして……つい一週間前に、会ったばっかりなのに)
トモキ君の家のあった場所は、何もない、綺麗な更地になっていた。草もぼうぼうに生えていて、まるで昔からここだけが空き地だったみたいに、何にもなくなっていた。右隣の家や、左隣の家は、ぼくがこの前来たときのまま残っているのに、トモキ君の家だけがなくなっていた。
(引っ越したなんて、ぼく聞いてないよ)
トモキ君のほかに、ぼくはニビシティに知り合いはいない。そのトモキ君が、今はもうここにはいないのだ。つまりぼくは、あまり来たことの無いニビシティで、独りぼっちにされてしまったのだ。
その途端、ぼくは足がすくむような思いがした。ここからマサラタウンまでは、トキワの森を抜けなきゃいけないから、ものすごく遠い。一日かかって、やっと抜けられるかどうかっていうぐらいだ。家に帰れるか、不安になってきた。
(とにかく、家に帰らなきゃ。家に帰れば、きっと元通りになるはずだ)
ぼくはそう思って、今度はトキワの森に足を向けた。
(家に帰って、お母さんのご飯を食べて、ぐっすり眠れば、みんな忘れられる)
そうだ。今日起きたヘンなことは、一日経てばみんな元通りになるはずだ。ぼくはそう思って、とにかく急いで家に帰る事にした。家に帰って、今日は早く寝よう。
ぼくはなるべく早く歩いて、思ったよりも早く、トキワの森へとつながるゲートまでたどり着いた。ゲートをくぐれば、そこはもうトキワの森だ。
ぼくはゲートのドアに手を掛けてから、今までに起きたことを思い出して、
(ちゃんと、ゲートにつながってるよね)
ちょっと不安になりながらゲートの扉を、恐る恐る開けた。
すると……
最初のコメントを投稿しよう!