壁はゆめの五階で、どこにもゆけないいっぱいのぼくを知っていた

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「ねえ、何でそんなことしてるの?」 「見りゃ分かるだろ。釣りをしてるんだ」 「でも、ここデパートだよ」 「いいんだよ。此処じゃないとできないから」 男の子はそう言って、また釣りをし始めた。 「あっ!」 「……?」 「かかったみたいだな」 そう言うや否や、男の子は釣竿を上げた。すると、そこには。 「な、なにこれ……」 「何って、ミュウだよ。伝説のポケモンの」 「で、でも……」 男の子の指さす先には、メノクラゲが引っかかっていた。どう見ても、メノクラゲだった。 「それ、メノクラゲじゃないの?」 「いいんだよ。後で見た目を元に戻すから」 「……………………」 そう言うと男の子はモンスターボールを取り出して、あっという間にメノクラゲを捕まえてしまった。周りの人は、それに別に何も気にする様子は無い。ぼくだけが、その光景をおかしいと思っている。 ぼくだけが、何かが違う。 「ねえ……」 ぼくはもう一度話しかけようとしたけど、男の子は振り向かなかった。 「ねえったら」
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