壁はゆめの五階で、どこにもゆけないいっぱいのぼくを知っていた

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ぼくはいつものように、道を歩いていた。マサラからトキワへつながる、通いなれた道だ。 時々草むらがあって、段差をつなぐための小さな坂がある。それ以外には、本当に何も無い。 「ここはいつ通っても、ちっとも変わらないなあ」 ぼくはそんなことを考えながら、いつものように道を歩いていく。途中で何度かポッポやコラッタと出会ったけど、ぼくはそんなのよりもっと強いポケモンを連れているから、全然気にならない。 「もうちょっと、変化が欲しいなあ」 ここはいつ通っても、ポッポやコラッタがいる。それだけじゃない。ここで顔をあわせるのは、いつも同じトレーナーだ。出会っても挨拶をするぐらいで、特にどうってことはないんだけど、いつもいつも同じ顔を見ていると、なんだか少し飽きてくる。 少しぐらい、変化があってもいいのに。 退屈な気持ちを抱えながら、ぼくはふと、隣の道に広がる草むらを見た。 (そう言えば、あんなところにも草むらがあったんだっけ)
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