壁はゆめの五階で、どこにもゆけないいっぱいのぼくを知っていた

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ぼくは長い間マサラタウンに住んでいるけど、あの草むらへは一度も行ったことが無い。高い塀に囲われていて、入れないのだ。 ぼくだけじゃない。あの草むらの中に誰かが入っているのを見た事も無い。ひょっとしたら、誰も入ったことが無いのかも知れない。 (あそこにも、ポケモンがいるのかなあ) 草むらを見ているうちに、ぼくはだんだんそれがすごく気になってきた。誰も入ったことの無い草むら。周りを高い塀に囲まれている、あの草むら。それは見渡す限り、どこまでも広がっている。 (気になるなあ) ぼくの草むらへの興味はどんどん増えてきて、だんだん入りたくて仕方なくなってきた。もしかしたら、この辺りでは出てこないような、すごく強いポケモンがたくさん住んでいるのかも知れない。だから、子供が入っちゃ危ないからって、大人の人が塀をこしらえて、入れなくしてしまったのかもしれない。 (でも、今のぼくならきっと大丈夫。塀だって越えられるし、強いポケモンもたくさん連れてる) そう思うと、ぼくはもう、草むらに入る気持ちが固まっていた。 (ようし。入ってみよう。向こうの草むらを通って、トキワシティまで行こう) ぼくは塀に手を掛けると、草むらの中に入った。
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