壁はゆめの五階で、どこにもゆけないいっぱいのぼくを知っていた

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「すごいや。どこまでも草むらが広がってる」 ぼくは草むらに入ってから、草むらが思っていたよりもうんと遠くまで続いていることに気がついた。見渡す限り、ずっとずっと草むらだ。 「ちょっと向こうまで行ってみよう」 そう思って、草むらの中を歩き出した。 草むら自体は、ぼくがいつも通っている道の草むらと何も変わらなかった。背の高い草むらがずっと続いていて、今にもポケモンが飛び出してきそうな感じだ。違うのは、いつも通っている草むらとは違って、草むらがどこまでもどこまでもずっとずっと続いているということだけだった。 「何か出てこないかなあ」 ぼくはすごいポケモンが出てくるような気がして、胸をわくわくさせながら、しばらく草むらを歩き続けた。 「……………………」 背の高い草むらがずっとずっと続いている。一歩踏みしめるたびに、じゃり、じゃり、という音が、やけに大きく聞こえてくる。この草むらは、どこまで続いているんだろう。 「でも、どうして誰も入らなかったのかなあ」 ぼくはそんなことを考えながら、草をかき分けてどんどん進んでいった。ひょっとしたら、見た事も無いような珍しいポケモンが、驚いて飛び出してくるかもしれない。楽しみだなあ。 「……………………」 ぼくはそのまま、草むらを進んでいった。
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