壁はゆめの五階で、どこにもゆけないいっぱいのぼくを知っていた

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「……おっかしいなー。ちっとも出てこないや」 でも、ずいぶん長い間草むらの中を歩いてみたけど、ポケモンは一匹も出てこなかった。珍しいポケモンどころか、この辺りにたくさん住んでいるはずのポッポやコラッタも、一匹も出てこなかった。本当に、一匹も出てこなかったのだ。 「ポッポやコラッタぐらい、出てきてもいいのになあ」 ぼくはちょっとがっくりしながら、これ以上進むのをやめて、トキワシティへ行くことにした。方向を変えて真っ直ぐ進めば、また塀を超えてトキワシティに出られるはずだ。 「ちょっと期待しすぎたのかなあ」 どこまでもいつまでも広がる草むらを見ながら、ぼくはトキワシティのある方に向かって歩いていった。 「……………………」 しばらくすると塀が見えてきて、草むらが終わっていた。あの塀を乗り越えて中に入れば、またいつも通りの道に戻ることになるのだ。またちょっと退屈な、あの元の道に。 「よいしょ」 ぼくは塀を乗り越えて、トキワシティに入った。
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