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『キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン。』
決して五月蝿くは無いのだが、やたらと耳に付く慣れ親しんだ音が学校内に鳴り響く。
その音により、帰る者や騒ぐ者、部活へと向かう者が出始める。
「よ、一緒に帰ろうぜ、竣。」
その中でもある意味普通である意味異常な者が竣と呼ばれる青少年に話し掛ける。屈託のない笑みを浮かべるその顔は少し幼く感じはするが、上の中と称される程の顔付きをしている。
勿論それだけでは無く、運動も勉強もほぼ上の中だ。
と、竣はしばらくその青少年をつまらなさそうに眺めていたが、やがて『つまらなさそう』に鼻を鳴らし、一言呟いた。
「どうしてお前はそんなに俺に構うんだ、透。」
その口調からも、やはり嬉しさや楽しさと言った感情は聞き取れず、周りの人から見れば冷たく、人の心を知らないロボットの様に感じられる。そして付いた渾名は、
『アンドロイド』であった。
そんな冷たい目に冷たい口調をされたにも関わらず、透は笑顔をシールの様に顔に貼り付けたまま、口を尖らせた。
その様子はもう高校生とは思えない行為で、子供かと突っ込みたくもなる。
「だって竣たら俺っちと遊ぶ約束してくれた事無いじゃん。今日こそ遊ぼうと思って。」
その尖らせた口からはまたまた子供みたいな理論。それも一人称までおかしいと来ている。
竣は一つ嘆息し、鞄を手に掴み立ち上がる。そして、
「だから何で俺に付きまとうのか聞いてるんだ!いや、もういい。いつもお前の答えは『別にいいじゃ~ん』だしな。聞いたって意味ない事だ。」
そこで言葉を区切り、教室のドアまで歩み寄る。そして透へと振り返り、
「じゃあな。」
ドアを締め切った。まるで風さえも出てくるなと言わんばかりに。そして恐らく扉の向こう側では透が目を丸くして突っ立っているであろう。が、竣は気にもせず、と言った感じで歩き始めた。
無論家へと直行する為であり、級友と離れる為でもあった。
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